📖この章で学ぶこと
この章では、財務会計が果たす二つの機能(情報提供機能と利害調整機能)、金融商品取引法・会社法・法人税法という制度会計の枠組み、そして会計基準設定の土台となる概念フレームワーク(意思決定有用性を頂点とする質的特性、資産・負債・純利益・包括利益の定義、リサイクリング)を学びます。財務会計論すべての土台となる最重要の章です。
🔥ここが頻出
概念フレームワークは短答式・論文式ともに頻出です。とくに「資産・負債の定義」「純利益とリスクからの解放」「純利益と包括利益の関係(リサイクリングとクリーン・サープラス関係)」は繰り返し問われます。定義は一言一句を意識して正確に覚えましょう。
財務会計は、企業外部の利害関係者に対して会計情報を提供する会計である。その最も基本的な機能の一つが、投資家などの意思決定に有用な情報を提供するである。もう一つの重要な機能が、株主と債権者、あるいは経営者と株主といった利害関係者の間の利害を調整するであり、配当可能額(分配可能額)の算定などがこれにあたる。両機能はしばしば緊張関係に立つが、いずれも財務会計の存在意義を支えている。我が国の制度会計は、目的の異なる複数の法規制のもとで営まれている。上場企業などの投資家保護を目的とし、有価証券報告書による開示を求めるのが会計である。株主と債権者の利害調整を主たる目的とし、分配可能額の算定などを規律するのが会計である。さらに、課税所得の計算を目的とするのがに基づく税務会計であり、確定した決算に基づいて申告を行う確定決算主義が採られている。これら三つの制度会計は、共通の企業会計原則や会計基準を基礎としつつ、それぞれの目的に応じて調整されている(トライアングル体制)。我が国では、会計基準を設定する際の基礎となる考え方を体系化した討議資料「財務会計の概念フレームワーク」が公表されている。財務報告の目的は、投資家による企業の成果予測と企業価値評価に役立つ情報、すなわち投資の(財政状態)と投資のを測定して開示することにある。このような情報開示を通じて、企業の将来を予測するが自らの意思決定に役立てることが期待されている。この一連の情報開示の仕組みを制度という。会計情報が備えるべき特性のうち、階層の最上位に位置づけられ、他のすべての特性を支える基本的な性質がである。これを支える二つの下位の特性のうち、会計情報が投資家の予測や意思決定に違いをもたらす性質をといい、情報価値の存在と情報ニーズの充足によって支えられる。もう一つの、会計情報が信頼に足るという性質をという。信頼性は、特定の利害関係者に偏っていないという、測定者の主観に左右されず同様の結論に到達できるという、および事実と会計上の分類・数値とが対応しているというの三つによって支えられる。💡質的特性の階層を三段でイメージ
「意思決定有用性→(意思決定との関連性・信頼性)→(中立性・検証可能性・表現の忠実性)」。頂点の有用性を、関連性と信頼性の二本柱が支え、信頼性をさらに三つの性質が支える三段構えでイメージすると覚えやすい。
これらの質的特性を機能させる一般的制約として、個別の会計基準が概念フレームワークの考え方と矛盾しないというと、企業間・期間間で情報を比較できるというが挙げられる。財務諸表の構成要素のうち、過去の取引または事象の結果として報告主体が支配している経済的資源をという。資産の定義の核心は、報告主体がその経済的資源をしていることにあり、法的な所有権の有無だけで判断されるわけではない点に注意が必要である。一方、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源を放棄もしくは引き渡す義務、またはその同等物をという。負債の本質は、経済的資源を引き渡すである。資産と負債の差額として定義されるのがであり、これは資産・負債の定義から導かれる概念である。純資産のうち、報告主体の所有者である株主に帰属する部分をという。📌純利益(フロー)を軸に組み立てる
我が国の概念フレームワークは、まず純利益(フロー)を重視し、資産・負債を定義したうえで収益・費用を導く構成をとる。純利益は「リスクから解放された投資の成果」であり、単なる現金の受取りや時価変動の全部を意味しない点が核心である。
特定期間の期末までに生じた純資産の変動額のうち、その期間中にリスクから解放された投資の成果であって、報告主体の所有者に帰属する部分をという。純利益の測定において鍵となる概念が、投資家が期待していた成果が事実へと転化するである。純利益は報告主体のに帰属する点で、非支配株主に帰属する部分とは区別される。一方、特定期間における純資産の変動額のうち、報告主体の所有者との直接的な取引によらない部分をという。包括利益から純利益を控除した差額をといい、その他有価証券評価差額金や繰延ヘッジ損益などが含まれる。純利益を増加させる項目であり、投資のリスクから解放された部分をといい、純利益を減少させる項目をという。収益・費用は、純利益および資産・負債の定義を前提として位置づけられる。その他の包括利益に計上された項目を、その後リスクから解放された時点で純利益に組み替える処理を(組替調整)という。この処理により、その他有価証券の売却時などに、過去に純資産へ計上した評価差額が純利益に振り替えられる。純利益の累計と株主資本の変動額とが一致するという関係が保たれることで、純利益と株主資本の連携が確保される。リサイクリングを行わないと、投資の成果が純利益に一度も現れないまま純資産だけが変動し、期間損益計算の信頼性が損なわれてしまう。