令和8年度 中小企業診断士1次試験 講評——「経済に始まり、中小に終わった」2日間
令和8年8月1日・2日に実施された中小企業診断士1次試験を速報講評。経済と中小の難化、経営情報システムのAI時事シフト、ボーダーライン上の攻防——科目別の出題傾向・難易度とSNSでの受験生の反応をまとめました。
令和8年8月1日(土)・2日(日)の2日間、令和8年度 中小企業診断士第1次試験が全国10地区で実施されました。7科目・計8時間超のマークシート試験を、しかも猛暑のなか走り切った受験生の皆さん、本当にお疲れさまでした。この記事では、試験直後に公開された受験指導校の解答速報と、SNS上の受験生の自己採点報告・感想をもとに、科目別の出題傾向と難易度、全体の講評を速報としてまとめます。
先に全体像を要約すると、今年は「経済学の難化に始まり、中小企業経営・政策の難化に終わった」2日間でした。一方で企業経営理論は比較的取り組みやすく、経営情報システムは生成AI関連の時事出題への対応度で明暗が分かれるなど、科目間の難易度の凸凹が大きい年です。SNSでは「総合60%前後のボーダーライン上」という自己採点報告が目立ち、傾斜配点や解答が割れている問題の行方が例年以上に注目されています。
なお、本記事は試験当日夜時点の速報情報に基づく講評です。公式の正解・配点は、試験実施団体である一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会の発表で必ず確認してください。難易度の確定的な評価(科目別合格率)が明らかになるのは、9月1日(火)の合格発表時です。
全体総評——科目間の凸凹が大きい「例年並み〜やや難」
試験は例年どおり、1日目に経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理の4科目、2日目に経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策の3科目という構成で行われました。解答速報ベースの問題数は、経済学25問・財務会計25問・企業経営理論41問・運営管理44問・経営法務25問・経営情報システム25問・中小企業経営・政策42問。1次試験の合格基準は例年、「総点数の60%以上、かつ1科目でも満点の40%未満がないこと」とされています。
全体の難易度は、速報ベースでは「例年並み〜やや難」という見立てです。引き上げ要因ははっきりしていて、経済学と中小企業経営・政策の2科目。昨年(令和7年度)の1次試験は合格率23.7%で、科目別合格率は財務・会計が8.4%と極端に低く、中小企業経営・政策が30.7%と高いという凸凹の年でした。試験前から受験指導校の間では「中小の揺り戻し難化」が広く予想されており、それがほぼ的中した形です。
もうひとつ今年を特徴づけるのが、ボーダーライン上の受験生の多さです。SNSの自己採点報告では総合59〜61%付近に集中する傾向が見られ、「傾斜配点しだい」「解答割れ問題しだい」という声が相次ぎました。科目間の凸凹が大きい年は、得意科目の貯金で苦手科目を補う総合力が問われます。まさにその構図が表れた試験と言えるでしょう。
1日目の講評——経済の難化に出鼻をくじかれ、経営理論で立て直す
経済学・経済政策(難化)。SNSで最も「崩れた」という報告が多かった科目のひとつです。1問目から難問が並び出鼻をくじかれたという声が多く、経済学説寄りの見慣れない出題に驚いたという報告もありました。自己採点は40〜60点台の報告が中心で、十分に対策した受験生でも崩れたケースがある一方、90点台の報告もあり、得点差が大きく開いた模様です。足切り(40点未満)を心配する声も少なくありません。
財務・会計(普通〜やや難)。昨年の科目合格率8.4%という極端な難化からはやや落ち着いたものの、決して易しい年ではありません。会計基準・規則系の細かい知識を問う問題が印象に残ったという受験生評が目立ち、一部の問題には解答への疑義を指摘する声もありました。電卓なしで60分・25問という時間的なプレッシャーは例年どおりで、自己採点報告は30点台から80点台まで大きくばらついています。
企業経営理論(標準・今年の得点源)。7科目の中では最も手応えの声が多く、自己採点60〜80%の報告が中心でした。ただし、長い設問文から最後の2択を絞り込む「読解力勝負」の作りは今年も健在で、2択で落とし続けたという嘆きも例年どおり。得点源にできた受験生と、読み違いで伸ばしきれなかった受験生に分かれました。
運営管理(標準〜やや難)。44問というボリュームに体力を削られたという声と、見慣れない用語への戸惑いが目立ちました。自己採点50〜60%台前半のボーダー報告が特に多く、2点問題と3点問題の傾斜配点の付き方しだいで科目合否が動く受験生が多数。「配点発表待ち」の筆頭科目です。
2日目の講評——中小の難化がクライマックス、情報はAI時事シフト
経営法務(標準〜やや難)。会社法の比重が高く、民法は改正論点(契約解除に帰責事由が不要となった点、消滅時効、即時取得の要件など)が細部まで問われたと報告されています。社会的に注目を集めた公益通報者保護法からの出題という時事性の高いテーマもありました。恒例の英文問題は「単語知識だけでは切れない、一癖ある作り」との評。全体としては標準〜やや難の範囲ですが、SNS上の感想はややネガティブ寄りでした。
経営情報システム(評価が真っ二つ)。今年の出題傾向を最も象徴する科目です。基礎論点に加えて、AIの民主化、スマートコントラクト、デジタルスキル標準ver2.0、AI事業者ガイドラインといった直近の時事・政策文書からの出題が幅広く見られ、今年公表されたばかりの資料からの出題を指摘する声もありました。その結果、「今年のボーナス科目だった」という易化評価と「昨年より確実に難しかった」という難化評価が真っ二つに割れています。ITの最新動向を追っていた層とそうでない層で、明暗がはっきり分かれた科目と言えます。
中小企業経営・中小企業政策(難化・今年の最難関)。SNSで最も悲鳴が多かった科目です。前半の白書問題は従業者数・付加価値額・労働生産性・価格転嫁といった統計の細部を問い、後半の政策問題は令和8年度に改編・新設された補助金(小規模事業者持続化補助金、新事業進出補助金、SBIR、海外展開支援など)や下請法改正の内容にまで踏み込みました。制度が新しすぎて教材でカバーしきれていない論点が多く、ある解答速報サービスでは速報段階で見解が割れた問題6問がすべてこの科目に集中するという異例の事態に。「足切りが怖い」という声が相次ぎました。この科目の合格率は令和6年度5.6%→令和7年度30.7%と極端に振れており、今年は再び大きく下がる可能性があります。
SNSでの反応——ボーダー層の多さと「教材ガチャ」
試験終了後のSNSは、2日間を走り切った解放感・ねぎらいと、経済・中小への悲鳴が混在する状態でした。感情分析ではポジティブとネガティブがおおよそ6:4で拮抗しており、体感難易度が人によって大きく違う年だったことがうかがえます。受験生の反応から見えてきたポイントを整理します。
- ボーダー層の多さ——総合59〜61%付近の自己採点報告が非常に多く、「配点しだい」「疑義問題しだい」という声が例年以上に目立ちました。傾斜配点と解答割れ問題の帰趨が合否を左右しそうです。
- 教材との相性論争——中小企業経営・政策について、同じ科目なのに「使っていた教材からよく出た」という声と「対策範囲が外れた」という声が併存。制度改編の年は、単一教材への依存がリスクになることを示す結果でした。
- 科目合格狙いの戦略受験——最初から3〜4科目に絞って受験したという報告が多く、7科目一括突破の難しさと、科目合格制度を活かした複数年計画の広がりがうかがえます。
- 体力勝負——猛暑のなかの2日間・計8時間超で、「とにかく疲れた」という声が多数。試験は知識だけでなく、当日のコンディション管理まで含めた総合戦です。
難易度の総括——過去問の反復「だけ」では取り切れない年
昨年の合格率23.7%に対し、経済と中小の2科目が全体を引き下げる要因になるため、今年の1次合格率は横ばい〜やや低下というのが現時点での見立てです(あくまで速報ベースの推測です。確定値は9月1日の合格発表を待ちましょう)。
出題傾向の面では、今年の1次試験は3つの流れがはっきり表れました。第一に、経営情報システムと中小企業経営・政策を中心とした「時事・最新制度へのシフト」。生成AI関連の政策文書、令和8年度の補助金改編、下請法改正など、直近1年のアップデートがそのまま出題されています。第二に、経営法務・財務会計に見られる「改正論点・規則の細部」の重視。第三に、企業経営理論・運営管理で続く「読解力・処理量勝負」です。過去問の反復演習が土台になることは変わりませんが、それだけでは取り切れない領域が広がっており、直前期に白書・施策・ITトレンドを最新情報でアップデートできたかどうかが、今年の合否を分けた印象です。
今後のスケジュール——2次へ進む人も、来年を目指す人も
今後の主なスケジュールは次のとおりです。自己採点は速報ベースの暫定値なので、公式の正解・配点が公表されたら必ず採点し直してください。
- 正解・配点の公表——例年、試験後まもなく試験実施団体(日本中小企業診断士協会連合会)から公表されます。
- 1次試験 合格発表——令和8年9月1日(火)。科目合格者の発表も同日です。
- 2次試験の申込——令和8年9月1日(火)〜9月18日(金)。
- 2次筆記試験——令和8年10月25日(日)。1次からわずか約3か月です。
- 2次試験 合格発表——令和9年1月13日(水)。
自己採点でボーダーライン上にいる人は、結果を待たずに今日から2次対策に切り替えるのが定石です。事例問題の記述演習は仕上がるまでに時間がかかるため、「受かっていたら準備不足、落ちていたら無駄になる」と迷う時間がいちばんもったいない。一方、来年の再挑戦を決めた人は、まず科目合格の可能性を正確に把握しましょう。そのうえで、中小企業経営・政策は白書・施策が毎年更新されるため今年の教材を来年に持ち越せないこと、経営情報システムはAI関連の政策・ガイドラインのウォッチが必須になったことを、来年の学習計画に織り込むことをおすすめします。
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2次試験に進む人にとっても、1次で学んだ7科目の知識は事例を解く土台としてそのまま使い続けます。来年の再挑戦を決めた人にとっては、「今年どこまで積み上げたか」を忘れないうちに維持することが、来年の学習コストを大きく下げます。いずれの場合も、鍵になるのは試験直後の今、学習を完全に止めてしまわないことです。
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よくある質問
Q.令和8年度の中小企業診断士1次試験の難易度はどうでしたか?
A.速報ベースでは「例年並み〜やや難」という見立てです。経済学・経済政策と中小企業経営・政策の難化が全体を引き上げる一方、企業経営理論は比較的取り組みやすかったという声が多く、科目間の凸凹が大きい年でした。確定的な難易度(科目別合格率)は9月1日(火)の合格発表で明らかになります。
Q.令和8年度1次試験の合格発表はいつですか?
A.令和8年9月1日(火)に、試験実施団体である一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会のホームページで合格者の受験番号が掲載されます。科目合格者の発表も同日です。
Q.1次試験の合格基準はどうなっていますか?
A.例年、「総点数の60%以上、かつ1科目でも満点の40%未満がないこと」が合格基準とされています。企業経営理論や運営管理のように問題数が多い科目は1問あたりの配点が2点・3点と分かれるため、正確な自己採点には公式の正解・配点の公表を待つ必要があります。
Q.2次試験はいつ実施されますか?
A.令和8年度の2次筆記試験は10月25日(日)に実施されます。申込受付は9月1日(火)〜9月18日(金)、合格発表は令和9年1月13日(水)です。1次試験から約3か月しかないため、ボーダーライン上の人も含めて、早めに事例演習へ切り替えるのが定石とされています。
参考文献
- 中小企業庁「令和8年度の中小企業診断士試験について」(試験期日・試験地・合格発表日などの実施要領)。
- 一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会(試験実施団体。正解・配点、合格発表、科目別合格率などの一次情報を公表)。
- 各受験指導校が令和8年8月1日・2日に公開した解答速報・講評(速報値。正解・配点は公式発表で確定)。
- X(旧Twitter)上の受験生による自己採点報告・感想(令和8年8月2日時点の反応を参照)。