まだ習っていない範囲の問題を、いきなり解いてみる。「答えを知らないのに解いても意味がないのでは?」と感じますよね。ところが研究の世界では、これがしっかり効くと分かっています。それがプレテスト効果です。
プレテスト効果(pretesting effect)とは、学ぶ前に——答えを知らない状態で——あえて問題に挑むと、そのあとの学習が記憶に残りやすくなる現象のこと。予習というより「先に一回ぶつかってみる」イメージです。
いちばん意外なのは、事前テストで間違えてもちゃんと効くこと。むしろ「うーん、何だろう」と頭をひねって外した経験が、あとで正解に出会ったときの記憶を強めてくれます。
間違いが、知識の「受け皿」をつくる
答えを知らずに問われると、脳は関連しそうな知識を引っかき回し、「ここが分からない」という空欄をはっきり意識します。この状態で正解に出会うと、用意された受け皿にスポッとはまり、記憶に残りやすくなります。
これは、検索練習と地続きの現象です。検索練習が「学んだ後に思い出す」なら、プレテストは「学ぶ前に探しにいく」。どちらも、答えを探そうとする負荷が記憶を助けてくれます。
「解けないと意味がない」は思い込み
プレテストの目的は、正解することではありません。狙いは、そのあとに読む解説の吸収率を上げること。だから「いきなり過去問」「まず予想問題から」というやり方は、じつは理にかなっています。
もちろん、解けたらラッキー。でも解けなくても、ちゃんと前進しています。「外したからこそ、解説がスッと入ってくる」——そんな手応えを一度味わうと、わからない問題に挑むのが少し楽しくなるはずです。
研究が示していること
Richland, Kornell & Kao (2009)
どんな実験? ある文章を読んで学ぶ前に、片方のグループにはその内容についての質問を先に出しました(当然まだ答えは知らないので、ほとんど外します)。もう片方は、同じ時間ぶん文章を余分に読んで予習。そのうえで、後から内容のテストをしました。
どうなった? 事前に質問を受けたグループは、答えを外していたにもかかわらず、的になった部分の内容をよく覚えていました。ただ余分に読むより、「先に問われる」ほうが効いたのです。
外しても大丈夫。「先に問われる」こと自体が、あとの理解を深めます。
Kornell, Hays & Bjork (2009)
どんな実験? 結びつきの弱い単語ペアを覚える実験です。片方のグループは、答えの語を見る前に「何だろう」と推測してから正解を確認(ほぼ外します)。もう片方は、最初からペアをそのまま見て覚えました。
どうなった? 推測してから学んだグループのほうが、最終的によく覚えていました。たとえ答えられない推測(失敗する検索)であっても、そのあとの学習を後押しすると示されたのです。
「当てずっぽうで外す」ことすら、次の学習の栄養になります。
なぜ効くのか(メカニズム)
先に問われると「答えを知りたい」という構えができ、解説の的になる部分へ自然と注意が向きます。外した悔しさや「気になる」という感覚も、記憶を後押しすると考えられています。
スキマ資格での実践
スキマ資格は「まず解く → すぐ解説で学ぶ」が基本の流れです。これはプレテスト効果を、そのまま日常の演習に落とし込んだもの。知識ゼロの分野でも、先に問題へぶつかってから解説を読むと、ぐっと入ってきます。
新しい資格を始めるときは、テキストを読み込む前に予想問題を1セット解いてみてください。ボロボロでも大丈夫。そこで見えた「分からないところ」が、その後の学習の地図になります。
よくある質問
Q. 知らない範囲をいきなり解くなんて、非効率では?
直感には反しますが、研究では「先に解く」ほうが後の学習効率を高めると分かっています。解けなくて当たり前。むしろ、外すことに意味があります。
Q. プレテストと検索練習は何が違うの?
タイミングが逆です。検索練習は学んだ「後」に思い出す練習、プレテストは学ぶ「前」に問いへぶつかること。どちらも「答えを探す負荷」が記憶を助ける、いわば兄弟のような関係です。
Q. 選択式と記述式、どちらが効果的?
どちらでも効果はあります。傾向としては、答えをひねり出す負荷が大きいほど効果も大きめ。まずは気軽に、選択肢から「これかな?」と選ぶだけでも十分なスタートになります。
参考文献
- Richland, L. E., Kornell, N., & Kao, L. S. (2009). The pretesting effect: Do unsuccessful retrieval attempts enhance learning? Journal of Experimental Psychology: Applied, 15(3), 243–257.
- Kornell, N., Hays, M. J., & Bjork, R. A. (2009). Unsuccessful retrieval attempts enhance subsequent learning. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 35(4), 989–998.
※ 紹介した研究は学習科学における代表的な知見です。効果には個人差があり、合格を保証するものではありません。スキマ資格はこれらを学習設計の指針として参照しています。
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