試験前の追い込みで、休日に机へ向かって8時間。気合いは満点です。でも、2週間後にどれだけ残っているかと聞かれると——正直あやしい。じつは「まとめてやる」勉強には、頑張った割に抜けやすいという弱点があります。
分散学習(distributed practice)は、同じ勉強量を一度に詰め込まず、日をあけて何回かに分ける考え方です。総時間は同じでも、分けたほうが長く残る。これを「分散効果(spacing effect)」と呼びます。100年以上前から繰り返し確かめられてきた、学習研究でもっとも頑健な現象のひとつです。
反対に、一気に固めるやり方が「集中学習(massed practice)」、いわゆる一夜漬けです。直前には効くのに、数日でごっそり抜ける——誰しも心当たりがあるのではないでしょうか。
なぜ「間隔」が効くのか
間隔をあけると、人はいったん内容を忘れかけます。そこでもう一度思い出そうとすると、ちょっとした努力が要りますよね。じつは、この「思い出しにくさ」を乗り越える一手間こそが記憶を鍛えてくれます(検索練習との合わせ技です)。
もうひとつ。別の日・別の場所・別の気分で学ぶと、記憶に結びつく手がかりが増えます。すると本番という「いつもと違う状況」でも引き出しやすくなる。同じ机で一気に固めた知識より、あちこちで少しずつ触れた知識のほうが、いざというときに顔を出してくれるのです。
一夜漬けは「悪」ではない。でも不利
念のため言っておくと、一夜漬けが無意味なわけではありません。明日のテストを乗り切るだけなら、前夜の詰め込みでも点は取れます。問題はその先で、数日後にはきれいに抜け落ちていることが多いのです。
資格試験は範囲が広く、しかも合格後も知識を使う場面があります。だからこそ「直前に強い」一夜漬けより、「あとに残る」分散学習が向いています。たとえば「週末にまとめて5時間」より「平日に20分ずつ」。同じ合計時間でも、後者のほうがしっかり残ります。
研究が示していること
Cepeda et al. (2006)
どんな実験? 1本の実験ではなく、過去に行われた「間隔をあけた学習 vs まとめた学習」の比較研究を大量に集めて分析した、いわばメタ分析(研究の研究)です。何百もの比較を横断して、どちらが成績を伸ばすのかを総合的に調べました。
どうなった? 結果は明快で、間隔をあけた学習が圧倒的に有利でした。しかも、テストまでの期間が長いほどその差は大きく開きます。「あとで思い出せるか」を問う場面ほど、分散の効果が効いてくるということです。
分散学習は気分や流行りではなく、膨大なデータに裏打ちされた頑健な効果です。
Bahrick & Phelps (1987)
どんな実験? スペイン語の単語を覚え直す学習を、「同じ日に詰めて」やる人と「約1か月の間隔をあけて」やる人で比べ、なんと8年後に抜き打ちでどれだけ覚えているかをテストしました。
どうなった? 8年も経てば普通はほとんど忘れていそうなものですが、間隔をあけて学んだ人たちは、はるかに多くの単語を覚えていました。数日の追い込みでは届かない、年単位の定着が起きていたのです。
間隔をあけるほど、忘れにくさは「年単位」で効いてきます。
Dunlosky et al. (2013)
心理学者たちが代表的な勉強法を有効性で格付けしたレビューでは、分散学習と練習テスト(検索練習)が、数ある手法の中でも「とくに効果が高い」二大巨頭に選ばれました。
スキマ資格での実践
毎日のスキマ時間にコツコツ解く——それ自体がもう分散学習です。スキマ資格は連続学習日数や学習カレンダーで「今日もちょっとだけ」を後押しし、学習日が自然とばらける設計にしています。
コツは、同じ分野を一気に固めようとしないこと。いくつかの分野をぐるぐる回しながら、日をあけて何度も顔を出すほうが、結果的に長く残ります。
よくある質問
Q. どのくらい間隔をあければいいですか?
ざっくり言うと、試験が遠いほど間隔も広めに。直前期なら1〜2日おき、まだ数か月あるなら1週間以上あけても大丈夫です(くわしくは「間隔反復」へ)。
Q. 毎日同じ範囲を繰り返すのはダメ?
ダメではありませんが、少しもったいないかもしれません。同じ範囲を毎日より、いくつかの範囲を回しながら日をあけて再訪するほうが、同じ時間でも定着しやすくなります。
Q. 分散学習と間隔反復は何が違うの?
分散学習は「間隔をあけるといい」という原理そのもの。間隔反復は、それを「いつ復習するか」のリズムまで具体化した実践版、というイメージです。
参考文献
- Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354–380.
- Bahrick, H. P., & Phelps, E. (1987). Retention of Spanish vocabulary over 8 years. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 13(2), 344–349.
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students' learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.
※ 紹介した研究は学習科学における代表的な知見です。効果には個人差があり、合格を保証するものではありません。スキマ資格はこれらを学習設計の指針として参照しています。
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