違いシリーズ一覧に戻る
財産・知的財産

著作者人格権と著作財産権の違い

著作権は大きく、創作者の人格的な利益を守る著作者人格権と、作品の利用をコントロールして経済的利益を得る著作財産権(狭義の著作権)に分かれる。両者は譲渡できるかどうかという点で正反対の性質を持つ。著作物を扱う実務では、財産権だけを譲り受けても人格権は著作者に残るという点が特に重要である。

比較表で見る違い

観点著作者人格権著作財産権
保護する利益著作者の人格的・精神的利益著作物の利用から得る経済的利益
譲渡の可否譲渡できない(一身専属)譲渡できる(全部または一部)
主な内容公表権・氏名表示権・同一性保持権複製権・公衆送信権・翻案権など
相続相続の対象とならない相続の対象となる
保護期間著作者の死亡で消滅(人格的利益の保護は別途存続)原則として著作者の死後70年

それぞれの詳しい解説

A著作者人格権

著作者人格権は、著作者の人格的・精神的な利益を保護する権利であり、公表権(未公表の著作物を公表するかを決める権利)、氏名表示権(著作者名を表示するかどうか等を決める権利)、同一性保持権(著作物やその題号を意に反して改変されない権利)から成る(著作権法)。著作者の人格と強く結びつくため一身専属の権利とされ、譲渡することも相続することもできない。したがって財産権としての著作権を他人に譲渡しても、人格権は著作者の手元に残り続ける。例えば作品が無断で改変されれば、財産権を譲った後でも著作者は同一性保持権に基づき異議を述べることができる。

  • 公表権・氏名表示権・同一性保持権から成る

  • 一身専属で譲渡も相続もできない

  • 財産権を譲っても著作者に残る

B著作財産権

著作財産権(狭義の著作権)は、著作物の利用をコントロールして経済的利益を得るための権利であり、複製権、上演権・演奏権、公衆送信権、翻案権など多数の支分権の束から成る(著作権法)。これらは財産的な権利であるため、全部または一部を他人へ自由に譲渡でき、相続の対象にもなる。出版社が著作者から複製権の譲渡や利用許諾を受けて書籍を出版するのは、この財産権の活用である。保護期間は原則として著作者の死後70年で、期間満了により権利は消滅し、著作物は誰でも自由に利用できるパブリックドメインとなる。人格権とは異なり、市場で取引される性質を持つ点が特徴である。

  • 複製権・公衆送信権・翻案権など支分権の束

  • 全部または一部を譲渡でき相続もできる

  • 保護期間は原則として著作者の死後70年

試験対策のポイント

著作者人格権=人格的利益(公表・氏名表示・同一性保持)・譲渡も相続も不可。著作財産権=経済的利益(複製権等)・譲渡も相続も可。「譲れない人格権か、譲れる財産権か」で区別する。

理解度チェック(3問)

Q1. 著作者人格権に含まれるものとして最も適切なものはどれか。

  1. 1複製権
  2. 2公衆送信権
  3. 3同一性保持権
  4. 4翻案権
解答・解説を見る

正解:3. 同一性保持権

著作者人格権は公表権・氏名表示権・同一性保持権から成り、このうち同一性保持権が該当するため3が正しい。複製権・公衆送信権・翻案権はいずれも著作財産権(狭義の著作権)に属する支分権であり、人格権ではないため1・2・4は誤りである。人格権は著作者の精神的利益を守るもの、財産権は利用から経済的利益を得るものという区別を意識すると、どちらに属する権利かを判別しやすくなる。

Q2. 著作権の譲渡に関する記述として最も適切なものはどれか。

  1. 1著作者人格権は自由に譲渡できる
  2. 2著作財産権は全部または一部を譲渡できる
  3. 3著作者人格権も著作財産権も、いずれも相続できない
  4. 4著作財産権を譲渡すると、著作者人格権も当然に譲受人へ移転する
解答・解説を見る

正解:2. 著作財産権は全部または一部を譲渡できる

著作財産権は財産的権利であり、全部または一部を他人へ譲渡でき相続の対象にもなるため2が正しい。著作者人格権は一身専属で譲渡できないため1は誤り。著作財産権は相続できるので、いずれも相続できないとする3も誤り。財産権を譲渡しても人格権は一身専属で著作者に残り続け、譲受人へ移転しないため4も誤りである。財産権だけが移り人格権は残る、という結論が実務上も頻出の重要ポイントである。

Q3. 著作者人格権と著作財産権の違いとして、適切でないものはどれか。

  1. 1著作者人格権は人格的利益を、著作財産権は経済的利益を保護する
  2. 2著作者人格権は譲渡できないが、著作財産権は譲渡できる
  3. 3著作財産権を他人に譲渡しても、著作者人格権は著作者に残る
  4. 4著作者人格権は相続でき、著作財産権は相続できない
解答・解説を見る

正解:4. 著作者人格権は相続でき、著作財産権は相続できない

著作者人格権は一身専属で相続できず、著作財産権は相続の対象となる。したがって相続の可否を逆にした4が誤りで正解である。人格的利益と経済的利益という保護対象の違いは1のとおり正しく、譲渡の可否の違いも2のとおり正しい。財産権を譲渡しても人格権が著作者に残るという3も正しい。譲渡も相続も「人格権はできない・財産権はできる」と一括して押さえると取り違えを防げる。

同じ分野の「違い」記事

ビジネス実務法務検定3級 一問一答で演習する