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行政法

自治事務と法定受託事務の違い

1999年地方分権一括法により、機関委任事務が廃止され、地方公共団体の事務は自治事務と法定受託事務に再編されました。自治事務は地方の自治、法定受託事務は本来国(都道府県)が果たすべき役割の事務、と整理します。

比較表で見る違い

観点自治事務法定受託事務
定義法定受託事務以外の地方公共団体の事務(自治法2条8項)本来国(都道府県)が果たすべき役割に係るもので、適正処理確保が必要な事務(2条9項)
国の関与原則として助言・勧告・資料提供・是正の要求まで助言・勧告に加え、是正の指示・代執行も可
審査請求の相手方原則として地方公共団体内部当該事務を所管する大臣等(255条の2)
条例制定権法令に違反しない限り制定可法令に違反しない限り制定可(自治事務と同じ)
典型例都市計画決定、独自の福祉サービス、小中学校の設置管理旅券交付(第1号)、生活保護、戸籍事務、国政選挙

それぞれの詳しい解説

A自治事務

地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外の事務(自治法2条8項)。地方の自治の範囲が広く、国の関与は原則として助言・勧告等の非権力的なものに限定されます。

  • 都市計画、福祉、教育、地域振興など

  • 是正の要求に従わない場合は国地方係争処理委員会の審査対象

B法定受託事務

本来国(または都道府県)が果たすべき役割に係るもので、国(都道府県)が法律またはこれに基づく政令により地方公共団体に処理させる事務(自治法2条9項)。第1号(国→都道府県・市町村)と第2号(都道府県→市町村)に分類されます。

  • 国の関与として「是正の指示」「代執行」が認められる

  • 審査請求の相手方は所管大臣等

試験対策のポイント

機関委任事務は廃止され、現在は「自治事務+法定受託事務」の二分類。法定受託事務は条例制定可だが、是正の指示・代執行など国の関与が強い点が頻出。

理解度チェック(3問)

Q1. 自治事務と法定受託事務に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 1法定受託事務については、地方公共団体は条例を制定することができない。
  2. 2自治事務については、国は是正の指示をすることができる。
  3. 3法定受託事務については、国は代執行を行うことができる。
  4. 4機関委任事務は、地方分権一括法施行後も自治事務の一類型として残存している。
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正解:3. 法定受託事務については、国は代執行を行うことができる。

法定受託事務には是正の指示・代執行が認められる(自治法245条の7、245条の8)。法定受託事務でも条例制定は可。自治事務に対する国の関与は原則「是正の要求」まで。機関委任事務は1999年に全廃された。

Q2. 次のうち、第1号法定受託事務として最も適切なものはどれか。

  1. 1都市計画の決定
  2. 2小中学校の設置管理
  3. 3旅券(パスポート)の交付
  4. 4独自の高齢者福祉サービスの提供
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正解:3. 旅券(パスポート)の交付

旅券交付は第1号法定受託事務(国が本来果たすべき役割)。都市計画、学校設置管理、独自福祉サービスは自治事務。生活保護、戸籍、国政選挙も第1号法定受託事務として頻出。

Q3. 法定受託事務に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 1法定受託事務には第1号と第2号がある。
  2. 2法定受託事務に係る都道府県の処分についての審査請求は、原則として所管大臣に対して行う。
  3. 3法定受託事務については、国は地方公共団体に対して是正の指示をすることができる。
  4. 4法定受託事務であっても、地方公共団体は法令に違反しない限り条例を制定できる。
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正解:2. 法定受託事務に係る都道府県の処分についての審査請求は、原則として所管大臣に対して行う。

法定受託事務(第1号)に係る市町村長の処分の審査請求は所管大臣等に行うが、都道府県知事の処分は所管大臣に行うのが原則(自治法255条の2)。第1号・第2号の区分、是正の指示、条例制定権はいずれも正しい。

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