A行政行為の取消
行政行為の成立時に存した瑕疵を理由として、その効力を行為時に遡って失わせる行為。処分庁・上級庁による職権取消と、争訟手続による争訟取消があります。授益的処分の取消は、相手方の信頼保護のため制限される場合があります。
処分庁・上級庁が職権で取消可(法律の根拠不要)
取消訴訟・審査請求による争訟取消もある
行政行為の効力を将来または過去に向かって失わせる制度として「取消」と「撤回」があります。取消は「原始的瑕疵」を理由とし遡及効を持つ、撤回は「事後的事情」を理由とし将来効のみ、と区別します。
| 観点 | 取消 | 撤回 |
|---|---|---|
| 原因 | 行政行為の成立時の瑕疵(原始的瑕疵) | 成立後の事情の変化(事後的事情) |
| 効果の発生時期 | 行為時に遡及(遡及効) | 将来に向かってのみ(将来効) |
| 権限主体 | 処分庁・上級庁(職権取消)/争訟取消は取消訴訟・審査請求 | 処分庁のみ(上級庁は不可) |
| 法律の根拠 | 不要(職権取消は法律根拠不要が通説) | 不要(侵害留保説で授益的処分の撤回は別途検討) |
| 相手方の信頼保護 | 授益的処分では制約あり | 授益的処分では補償等の検討 |
行政行為の成立時に存した瑕疵を理由として、その効力を行為時に遡って失わせる行為。処分庁・上級庁による職権取消と、争訟手続による争訟取消があります。授益的処分の取消は、相手方の信頼保護のため制限される場合があります。
処分庁・上級庁が職権で取消可(法律の根拠不要)
取消訴訟・審査請求による争訟取消もある
行政行為が有効に成立した後の事情の変化により、その効力を将来に向かって失わせる行為。撤回権を有するのは原則として処分庁のみで、授益的処分の撤回には公益上の必要等の正当化事由と、場合によっては損失補償が必要となります。
処分庁のみが行使可(上級庁は撤回不可)
将来効のみ・既に発生した効果には影響なし
「取消=原始的瑕疵・遡及効・処分庁/上級庁」「撤回=事後的事情・将来効・処分庁のみ」。判例(菊田医師事件)は法律の根拠なき撤回も適法としている。
Q1. 行政行為の職権取消と撤回に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
正解:3. 行政行為の撤回をすることができるのは、原則として処分庁のみである。
撤回権者は処分庁のみ(通説・判例)。取消は遡及効、撤回は事後的事情を理由とし将来効。上級庁は監督権の一環として職権取消はできるが撤回はできない。
Q2. 授益的行政行為の撤回に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
正解:2. 授益的行政行為の撤回には、公益上の必要等の正当化事由が必要である。
判例(最判昭63.6.17 菊田医師事件)は、授益的処分でも公益上の必要があれば法律の根拠なく撤回可能とした。撤回事由の存否で結論が決まり、損失補償は必ず必要とまではされない。
Q3. 行政行為の取消に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
正解:4. 授益的処分の職権取消は、相手方の信頼保護とは無関係に自由に行うことができる。
授益的処分の職権取消は相手方の信頼保護や法的安定の観点から制約される(通説・判例)。遡及効、職権取消の根拠不要、上級庁の取消権限は正しい。