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民法

履行遅滞と履行不能の違い

債務不履行の典型である履行遅滞と履行不能。遅滞は「履行できるのに遅れている」状態、不能は「もはや履行できない」状態。解除や填補賠償の可否で大きな違いがあります。

比較表で見る違い

観点履行遅滞履行不能
状態履行期到来後、履行可能なのに履行しない履行が(社会通念上)不可能
損害賠償遅延賠償(履行と併せて)填補賠償(履行に代わる賠償)
解除(催告)相当期間を定めて催告し、その期間内に履行なきとき解除可(541条)催告なくして直ちに解除可(542条1項1号)
帰責事由損害賠償には債務者の帰責事由が必要(解除には不要)同左
危険負担原則問題にならない債権者は反対給付の履行拒絶可(536条1項)

それぞれの詳しい解説

A履行遅滞

債務の履行期が到来し、履行が可能であるにもかかわらず債務者が履行しない状態。確定期限債務は期限到来時、不確定期限債務は期限到来後の請求または期限到来を知った時、期限の定めなき債務は請求時から遅滞となります(412条)。

  • 解除には相当期間を定めた催告が必要(541条)

  • 損害賠償は遅延賠償(遅延損害金)

B履行不能

契約その他の債務発生原因および取引上の社会通念に照らして履行が不可能と判断される状態(412条の2第1項)。物理的不能だけでなく、目的物の特定後の滅失等も含みます。催告不要で解除でき、填補賠償を請求できます。

  • 原始的不能でも契約は有効(412条の2第2項)

  • 債権者は反対給付の履行を拒絶できる(536条1項)

試験対策のポイント

解除については「遅滞=催告必要、不能=催告不要」が最重要。2020年改正で原始的不能の契約も有効、解除に債務者の帰責事由は不要となった点に注意。

理解度チェック(3問)

Q1. 債務不履行に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 1履行不能による解除には、相当期間を定めた催告が必要である。
  2. 2履行遅滞による解除には、債務者の帰責事由が必要である。
  3. 3原始的不能の契約は無効である。
  4. 4履行不能の場合、債権者は債務者に対して填補賠償を請求できる。
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正解:4. 履行不能の場合、債権者は債務者に対して填補賠償を請求できる。

履行不能の場合、債権者は履行に代わる損害賠償(填補賠償)を請求可能(民法415条2項1号)。履行不能による解除は催告不要(542条1項1号)。2020年改正で解除には帰責事由不要、原始的不能の契約も有効(412条の2第2項)。

Q2. 履行遅滞の発生時期に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 1確定期限のある債務は、その期限の到来時から遅滞となる。
  2. 2不確定期限のある債務は、債務者が期限到来後に履行請求を受けた時または期限到来を知った時から遅滞となる。
  3. 3期限の定めのない債務は、契約成立時から遅滞となる。
  4. 4不法行為に基づく損害賠償債務は、不法行為時から遅滞となる。
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正解:3. 期限の定めのない債務は、契約成立時から遅滞となる。

期限の定めのない債務は、債権者の履行請求を受けた時から遅滞となる(民法412条3項)。確定期限・不確定期限・不法行為債務の遅滞時期は正しい(不法行為は判例上、不法行為時)。

Q3. 債務不履行を理由とする契約の解除に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 1解除をするためには債務者の帰責事由が必要である。
  2. 2債務不履行が軽微であっても、催告期間経過後は当然に解除できる。
  3. 3履行不能の場合、債権者は催告をすることなく直ちに契約を解除できる。
  4. 4解除権は債権者の単独の意思表示では行使できない。
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正解:3. 履行不能の場合、債権者は催告をすることなく直ちに契約を解除できる。

履行不能の場合は催告不要で直ちに解除可(民法542条1項1号)。2020年改正で解除に帰責事由は不要となった。軽微な不履行は解除不可(541条但書)。解除は単独行為。

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