違いシリーズ一覧に戻る
民法

取消と無効の違い

取消と無効はともに法律行為の効力を否定する制度ですが、効力の発生時期・主張権者・期間制限が異なります。取消は「主張して初めて遡及的に無効」、無効は「最初から効力なし」と整理します。

比較表で見る違い

観点取消無効
効力一応有効。取消すと初めから無効(遡及効)当初から効力なし
主張権者取消権者に限定(制限行為能力者・錯誤者・詐欺/強迫を受けた者等)誰でも主張可能(原則)
期間制限追認可能時から5年・行為時から20年で消滅原則として期間制限なし
追認可能(追認により確定的に有効に)原則不可(無効行為の追認は新たな行為とみなす)
典型例制限行為能力者の行為、詐欺・強迫、錯誤による意思表示公序良俗違反、心裡留保(相手方悪意)、強行規定違反

それぞれの詳しい解説

A取消

一応有効に成立した法律行為について、特定の取消権者が取消の意思表示をすることで、行為時に遡って無効とする制度です。追認可能時から5年または行為時から20年で取消権は消滅します。

  • 主張できるのは取消権者のみ(民法120条)

  • 取消されるまでは有効、取消後は遡及的無効

B無効

法律行為が当初から効力を持たない状態。誰でも・いつでも主張でき、原則として時の経過で治癒されません。公序良俗違反(90条)や強行規定違反、相手方が悪意の心裡留保等が典型例です。

  • 無効行為の追認は新たな法律行為とみなされる(119条)

  • 不当利得返還の問題に発展することが多い

試験対策のポイント

「無効=最初から効果なし・誰でも主張」「取消=取消すまで有効・権者限定・期間制限あり」が基本。錯誤は2017年改正で「無効」から「取消」に変更された点に注意。

理解度チェック(3問)

Q1. 法律行為の取消と無効に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 1無効な法律行為は、追認によって行為時に遡って有効となる。
  2. 2取消しうる行為の取消権は、追認をすることができる時から10年で消滅する。
  3. 3無効は誰でも主張できるが、取消は取消権者のみが主張できる。
  4. 4錯誤による意思表示は無効である。
解答・解説を見る

正解:3. 無効は誰でも主張できるが、取消は取消権者のみが主張できる。

取消権者は法律で限定列挙される(民法120条)。無効行為の追認は新たな行為とみなされ遡及効はない(119条)。取消権の期間制限は追認可能時から5年・行為時から20年(126条)。錯誤は2017年改正で取消事由となった。

Q2. 次のうち、「無効」となる法律行為として最も適切なものはどれか。

  1. 1詐欺によってなされた意思表示
  2. 2被保佐人が保佐人の同意なくした借財
  3. 3公序良俗に反する売買契約
  4. 4錯誤に基づいてなされた意思表示
解答・解説を見る

正解:3. 公序良俗に反する売買契約

公序良俗違反は無効(民法90条)。詐欺・強迫・制限行為能力・錯誤はいずれも取消事由(96条・5条・13条・95条)。錯誤は2017年改正で無効から取消事由に変更された。

Q3. 取消権の消滅時効に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 1追認することができる時から3年以内に行使しないと消滅する。
  2. 2追認することができる時から5年、行為時から20年で消滅する。
  3. 3行為時から10年で消滅する。
  4. 4消滅時効にはかからない。
解答・解説を見る

正解:2. 追認することができる時から5年、行為時から20年で消滅する。

取消権は追認可能時から5年、行為時から20年で消滅する(民法126条)。両者のいずれか早い方の経過で消滅する除斥期間と解されている。

同じ分野の「違い」記事

行政書士 記憶定着問題で演習する