紛らわしい用語は「並べて」覚える——違いで記憶する勉強法
似た用語がごちゃ混ぜになるのは、別々に覚えているから。紛らわしい概念は並べて違いで覚えると区別がつく。対比学習の使い方を解説。
「この用語とあの用語、どっちがどっちだったか……」。試験勉強をしていて、似た言葉がどうしても頭のなかでごちゃ混ぜになる——これは、ほとんどの受験者が一度は通る悩みです。一つひとつは確かに覚えたはずなのに、いざ選択肢に二つ並ぶと、急に自信がなくなる。けっして珍しいことではありませんし、あなたの記憶力が弱いからでもありません。
原因の多くは、紛らわしい概念を「別々に」丸暗記していることにあります。じつは、似ているものこそ一緒に並べて、違いに注目しながら覚えるほうが、記憶にも、本番での得点にも効きます。この「並べて、違いで覚える」やり方は、対比学習や弁別学習と呼ばれ、学習研究のなかでも理にかなったアプローチとして知られています。
この記事では、なぜ別々に覚えると混ざってしまうのかという仕組みから、違いに注目することがなぜ効くのか、具体的にどう並べて整理すればよいのか、そしてつまずきやすい点までを順に解説します。読み終える頃には、あの厄介な「取り違え」を減らすための、はっきりした手順が手に入っているはずです。
なぜ「別々」に覚えると混ざるのか
まず、混ざる仕組みから整理しましょう。用語を一つずつ順番に覚えていくと、それぞれの「意味」は頭に入ります。ところが、このやり方では「他とどこがどう違うか」を見分ける練習がすっぽり抜け落ちてしまいます。一つの用語を見て、その説明を確認して、納得して次へ——という流れのなかでは、隣の似た用語と突き合わせる機会が一度もないからです。
ところが試験で問われるのは、まさにその「区別」です。選択肢には、正解とよく似たひっかけが必ず並びます。出題する側は、受験者がどこで取り違えるかをよく知っていて、あえて紛らわしいものを隣に置いてくるのです。だから、単独で説明を読めば分かるのに、二つ並べられた瞬間に迷う——という、あの悔しい現象が起きます。覚えた知識が足りないのではなく、「見分ける」という別の能力を鍛えていなかった、というだけのことなのです。
もう一つ見落とされがちなのが、別々に覚えると、それぞれの用語が「自分専用の説明文」とだけ結びついてしまう点です。テキストで読んだそのままの言い回しなら思い出せても、本番で少し角度を変えて問われると途端に手が止まる。輪郭がぼんやりしたまま、なんとなくの印象で覚えているからです。似たもの同士の境界線を引かないかぎり、この曖昧さはなかなか解消されません。
研究が示す「混ぜて練習する」効果
この「区別する力」を育てるうえで参考になるのが、似た問題をあえて混ぜて練習する効果です。Rohrer & Taylor(2007)は、数学の問題演習で興味深い比較を行いました。一方のグループは、同じタイプの問題をまとめて連続で解く。もう一方は、複数のタイプをわざとシャッフルして、ばらばらの順番で解く。練習中の手応えは、まとめて解いたほうが圧倒的に良く、すらすら解けます。ところが、後日のテストで高い成績を収めたのは、ばらばらに混ぜて解いたグループのほうでした。
なぜこんな逆転が起きるのでしょうか。同じタイプを連続で解いているときは、「今はこの解き方を使う場面だ」と最初から分かっています。だから、問題を見て「これは何を問うているのか」を見極める作業が要りません。一方、混ざった状態では、まず「これはどのタイプの問題か」を毎回判断しなければならない。じつは、この見極めの一手間こそが、本番で必要になる力そのものなのです。試験では、どんな問題が出るか前もって教えてはくれないのですから。
この、似たものを混ぜて「これは何か」を見分ける練習は、インターリービング(交互練習)と呼ばれ、紛らわしい用語の区別にもそのまま当てはまります。そして、数ある勉強法を有効性で格付けしたレビュー(Dunlosky ら, 2013)でも、こうした弁別を促す練習の系統は、丸暗記中心のやり方より見込みのある手法として位置づけられています。「別々にきれいに覚える」よりも、「並べて、ときに混ぜて、違いをあぶり出す」ほうが、結局は試験本番で効いてくるのです。
違いに注目すると、輪郭がはっきりする
では、具体的にどうすればよいか。やることは驚くほどシンプルです。紛らわしい二つの概念を左右に並べて、「どこが同じで、どこが違うか」を意識する。たったこれだけで、それぞれの輪郭がくっきりと浮かび上がります。同じ部分を確認することで「なぜ混ざりやすいのか」が腑に落ち、違う部分を見つけることで「ここさえ押さえれば取り違えない」という決め手が手に入ります。
人の記憶は、何かと何かを関連づけたときに強くなります。一つの用語をぽつんと覚えるより、「これは隣のあれと、ここが決定的に違う」という関係ごと覚えるほうが、思い出すための手がかりが増えるのです。違いという「フック」が引っかかりになって、本番でもするりと引き出せるようになります。孤立した点で覚えるより、線で結んで覚えるイメージです。
目指すゴールは、「AはBと違って〜だ」と一文でスラスラ言えるようにすること。この一文がつくれるなら、もう二つは混ざりません。逆に、言葉に詰まるなら、それはまだ違いを本当には理解できていないサインです。つまり、違いを説明しようとする行為そのものが、記憶のフックをつくると同時に、自分の理解の深さを点検するテストにもなっている——これが対比学習のいちばんおいしいところです。
「並べて覚える」具体的な手順
実際に手を動かすときは、次の手順で進めると整理しやすくなります。難しいことは何もありません。
- 1よく取り違える用語を二つ(多くても三つ)ピックアップして、横に並べる。
- 2まず「共通点」を書き出す。似ているからこそ混ざる、その理由をはっきりさせる。
- 3次に「決定的な違い」を一つか二つに絞る。あれもこれもではなく、見分けの決め手だけに集中する。
- 4最後に「AはBと違って〜」という一文で、自分の言葉で言い切ってみる。
ポイントは、違いを欲張って並べすぎないことです。区別の決め手は、たいてい一つか二つで足ります。たくさん書き出すと、かえってどれが本質か分からなくなり、本番で迷う原因になります。「ここだけ見れば見分けられる」という一点に絞るほうが、いざというときに思い出しやすくなります。
もう一つのコツは、表でながめて満足しないこと。きれいな対比表をつくると、それだけで分かった気になりがちですが、見て理解することと、自分で再現できることは別物です。表を一度閉じて、何も見ずに「この二つはどう違う?」と自分に問い、口や手で説明し直してみてください。スラスラ言えなかった箇所こそ、本番で取り違える危険ゾーンです。
つまずきやすい点と、その乗り越え方
対比学習には、気をつけたい落とし穴がいくつかあります。一つめは、さきほども触れた「分かった気」の罠です。よく似た二つを並べた表は、見ているぶんには区別できているように感じます。ところが、その手応えは曲者です。研究でも、すらすら進む練習ほど身についた気がするのに、実際の定着はそうでもない、という食い違いがたびたび指摘されています。スムーズさを上達と取り違えないよう、必ず「見ずに説明できるか」で確かめましょう。
二つめは、一度きりで終わらせてしまうこと。違いを整理した直後はくっきり区別できても、しばらく経つとまた境界がぼやけ、元の混乱に戻りがちです。これは記憶の自然な性質なので、悲観する必要はありません。大事なのは、忘れかけた頃にもう一度、その対比に立ち返ること。間隔をあけて何度か再訪するうちに、違いがだんだん「当たり前」になっていきます。
三つめは、似てもいないものまで無理に並べようとすること。対比が効くのは、あくまで「紛らわしいから混ざる」もの同士です。もともと取り違えようのない用語を並べても、労力に見合う効果は得られません。自分が実際にミスした論点、選択肢で迷った論点こそ、対比で整理すべき優先ターゲット。混乱した記憶ほど、並べて違いをあぶり出す価値が大きいのです。
スキマ資格でどう実践するか
ここまでの話を、毎日の勉強に落とし込んでみましょう。紛らわしい論点に出会ったら、その場で別々に覚えようとせず、「セットで」整理するのが鉄則です。とはいえ、自分でゼロから対比表をつくるのは手間もかかります。そこでスキマ資格には、試験で間違えやすい用語をあらかじめ対比した「○○と××の違い」のページを用意しています。
混同しやすいポイントが最初から並べて解説されているので、どこが同じで、どこが決定的に違うのかを、違いの側から一気に整理できます。「AはBと違って〜」という見分けの軸が示されているため、自分で一文をつくる練習にもそのまま使えます。読んだあとは、ページを閉じて「この二つはどう違った?」と自分に問い直すと、ぐっと定着します。
用語そのものの意味があやふやなときは、各資格の用語解説もあわせてどうぞ。意味を押さえてから違いで整理すると、理解がより立体的になります。そして、間隔をあけて何度か問題を解くなかで同じ論点に再会すれば、対比の記憶は自然と上書きされ、強くなっていきます。「並べて違いで覚える」を習慣にすれば、あの厄介な取り違えがぐっと減るはずです。まずは気になる一組から確かめてみてください。すべて無料です。
違いで整理する(各資格の「○○と××の違い」・無料)
よくある質問
Q.紛らわしい用語は、いくつまで並べていいですか?
A.基本は二つ、多くても三つまでがおすすめです。一度にたくさん並べると、どれとどれの違いを見ているのか分からなくなり、かえって混乱します。まずは特に取り違えやすい一組から始めて、区別がついたら次の組へ進むのが確実です。
Q.違いをたくさん書き出したほうが安心では?
A.逆に絞るほうが効きます。区別の決め手は、たいてい一つか二つで足ります。違いを並べすぎると、本番でどれが本質か思い出せず迷う原因になります。「ここだけ見れば見分けられる」という一点に集約するほうが、いざというときに使えます。
Q.対比表をつくれば、それで覚えられますか?
A.表をつくるだけでは「分かった気」で止まりがちです。見て理解することと、何も見ずに再現できることは別物。表を一度閉じて「この二つはどう違う?」と自分に問い、自分の言葉で説明し直してみてください。詰まった箇所が、本番で取り違える危険ゾーンです。
Q.対比学習とインターリービングは何が違うのですか?
A.対比学習は「似たものを並べて違いに注目する」という整理のしかた。インターリービングは、似た問題をあえて混ぜた順番で解き、「これは何か」を毎回見分ける練習法です。狙いは同じ「区別する力」で、並べて理解し、混ぜて鍛える、という補い合う関係にあります。
参考文献
- Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35, 481–498.
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students' learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.