コラム一覧に戻る
科学的勉強法2026年6月14日5

1科目ずつ完璧に、より「混ぜて解く」ほうが伸びる(インターリービング)

1分野ずつ完璧にしてから次へ——より、複数分野を混ぜて解くほうが本番で使える力が育つ。インターリービングの科学と取り入れ方を解説。

資格の勉強を始めると、たいていの人はこう計画します。「まずこの分野を完璧にして、終わったら次の分野へ」。順番にひとつずつ片づけていく、きちんとした進め方です。終わった分野が積み上がっていくのは気持ちがいいですし、目の前のことに集中できる安心感もあります。私自身も長らく、これが王道だと思っていました。

ところが学習研究をたどると、この「1分野ずつ完璧に」は、必ずしも本番で点を取れる勉強ではないと分かってきます。むしろ、複数の分野をわざと混ぜながら練習する「インターリービング(interleaving=交互練習)」のほうが、試験で使える力が育つのです。不思議なことに、解く問題の数は同じでも、ただ順番をばらして混ぜるだけで結果が変わります。

この記事では、インターリービングとは何かという基本から、それを裏づける研究、なぜ混ぜると効くのかという仕組み、つまずきやすい注意点、そして資格勉強への具体的な落とし込み方までを順番に見ていきます。読み終える頃には、「きれいに1分野ずつ」という気持ちのよい進め方が、じつは遠回りだったかもしれない、と思えるはずです。

「インターリービング」とは——順番を混ぜるだけ

まず言葉を整理しておきましょう。同じ種類の問題をまとめて連続で解くやり方を「ブロック練習(blocked practice)」と呼びます。たとえば「今日はずっと割引現在価値の計算だけ」「明日はずっと労働基準法だけ」といった進め方です。一方、複数の種類を入り混じった順番で解くやり方が「インターリービング」。AABBCCではなくABCABCのように、種類をばらして取り組みます。

ここで大事なのは、インターリービングは勉強量を増やす話ではない、ということです。解く問題の総数は同じまま、並べる順番だけを変える。「同じ分野を10問続けて」を「複数分野を混ぜて10問」に置き換えるだけです。つまり、努力やかける時間を増やさずに、得られる力を伸ばせる工夫だと言えます。

「順番を変えるくらいで、そんなに違うの?」と感じるのは自然です。ところが、この小さな違いが、後日のテストでは大きな差になって表れます。その証拠を、次に見ていきましょう。

研究が示していること

インターリービングを語るうえで欠かせないのが、Rohrer & Taylor(2007)の研究です。彼らは数学の問題を使って、ふたつの練習方法を比べました。一方のグループは、同じ種類の問題をまとめて連続で解く「ブロック練習」。もう一方は、複数の種類を混ぜた順番で解く「インターリービング」です。

練習している最中の出来は、まとめて解いたブロック練習のグループのほうが良好でした。同じパターンが続くので、コツをつかめばスラスラ解けるからです。手応えという点では、こちらのほうがずっと気持ちよかったはずです。

ところが、しばらく時間をあけてから受けた最終テストでは、立場が大きく逆転します。混ぜて練習したインターリービングのグループのほうが、はっきり高い成績を出したのです。練習中はうまくいかなかったはずの方法が、本番では勝った——練習中の手応えと最終的な実力が食い違うこの現象は、分散学習(分けて学ぶと記憶が残る現象)でも見られる、よくあるパターンです。

この「混ぜると後で強い」という効果は、ひとつの実験だけの特殊な結果ではありません。間隔をあけて学ぶことの効果をまとめた大規模な分析(Cepeda ら, 2006)でも、学習を時間的にばらして配置することの有利さが繰り返し確認されています。インターリービングは、この「ばらして配置する」考え方と地続きにある、信頼できる手法のひとつなのです。

なぜ「混ぜる」と本番に強いのか

では、なぜ「混ぜる」だけで本番に強くなるのでしょうか。理由はいくつかありますが、いちばん分かりやすいのが「問題を見分ける力」が鍛えられる点です。

同じ種類の問題を続けて解くと、「次もきっと同じパターンだろう」と頭が予測してしまいます。すると、問題文をよく読まなくても解き方が分かってしまい、「これは何を問う問題なのか」を判断する練習になりません。解法の手順をなぞるだけで終わりがちなのです。これが、ブロック練習で「できたつもり」になりやすい正体です。

一方、いろいろな種類が入り混じっていると、一問ごとに「さて、これは何の問題だろう」とまず見極める必要があります。似た問題どうしの違いに毎回向き合うことになり、知識の引き出しに正しいラベルが貼られていきます。じつは本番の試験こそ、まさにこの「どの知識を使えばいいかを自分で選ぶ」状況です。問題はわざわざ「これは○○の論点です」と教えてくれません。だから、混ぜて練習して身についた「見分ける力」が、そのまま本番で効いてくるのです。

もうひとつの理由が、分散学習との合わせ技になる点です。複数の分野を混ぜて回すと、ひとつの分野に再び戻ってくるまでに自然と間隔があきます。その間に少し忘れかけ、もう一度思い出す——この「思い出す一手間」が記憶を鍛えます。つまりインターリービングは、混ぜることで「分けて学ぶ」効果まで同時に取り込んでいるわけです。

注意点:手応えが下がっても焦らない

インターリービングには、ひとつ覚悟しておきたい特徴があります。それは、練習中の正答率が下がりやすいことです。同じパターンが続かないので、スラスラとは解けません。「あれ、さっきより解けない」と不安になり、「自分には向いていないのでは」とやめたくなることもあるでしょう。

でも、その引っかかりこそが効いているサインです。学習研究では、これを「望ましい困難(desirable difficulties)」と呼びます。少し負荷がかかってうまくいかない感じが、じつは記憶や判断力をいちばん鍛えてくれる——逆に、スラスラ解けて気持ちいい状態は、あまり身についていないことが多いのです。手応えの良さと実力は、しばしば逆を向きます。だから、正答率が一時的に下がっても落ち込まないでください。

もうひとつのつまずきは、「混ぜればいいなら、最初から全分野ごちゃ混ぜでいこう」と勢いこんでしまうことです。まったく未学習の分野をいきなり混ぜても、判断する以前に知識がないので、ただ難しいだけになってしまいます。コツは、一度ひと通り触れて「なんとなく分かる」状態になった分野どうしを混ぜること。土台が少しできてから混ぜる——その順番を守るだけで、効果はぐっと出やすくなります。

「混ぜて解く」具体的なやり方

では、毎日の勉強にどう落とし込めばよいでしょうか。難しいことはありません。意識するのは、次の3つだけです。

  1. 1「今日はこの分野だけ」と決め打ちしない。1回の勉強のなかに、複数の分野・科目を少しずつ混ぜる。
  2. 2似ていてまぎらわしい論点ほど、あえて隣り合わせで解く。違いに向き合うほど、見分ける力が育つ。
  3. 3一度ひと通り学んだ分野から混ぜる。土台のある分野どうしを回すのが、いちばん効率的。

やることはこれだけです。最初は「あちこち手を出して落ち着かない」と感じるかもしれませんが、本番の試験こそ分野が入り混じって出てきます。普段の練習をその形に近づけておくほど、当日の戸惑いは小さくなります。

スキマ資格でどう実践するか

ここまでの話を、毎日の勉強に落とし込んでみましょう。じつは、スキマ資格はこの「混ぜて解く」を、特別な準備なしに続けられるように設計しています。

一問一答や予想問題は分野・科目で分かれているので、「今日はこの科目を1セット、次はあの科目」と日替わりで回すだけで、自然とインターリービングになります。1問から解けて登録なしでもすぐ始められるので、スキマ時間にいくつかの分野をぐるぐる回すのも気軽です。同じ分野を一気に固めようとせず、複数をばらして触れる——それだけで、混ぜる練習が毎日の習慣になります。

さらに、間違えた問題や苦手な問題は記録されるので、後日それだけを選んで混ぜ直すこともできます。複数の分野を回せば、ひとつの分野に戻ってくるまでに自然と間隔があき、分散学習や間隔反復の効果も同時に働きます。「1分野ずつ完璧に」という気持ちのよい安心感を少し手放して、混ぜて回してみる——その一歩が、本番で効いてきます。まずは今日、ふたつの分野から1問ずつ、試してみてください。利用はすべて無料です。

分野を混ぜて回す(各資格の一問一答・無料)

よくある質問

Q.ブロック練習(1分野ずつ)はやってはいけないのですか?

A.いいえ、最初に解き方を理解する段階では、同じ種類をまとめて解くのも有効です。問題は「分かったあとも同じ分野を続けすぎる」こと。基礎をつかんだら、複数の分野を混ぜる練習に切り替えると、本番で使える力が伸びます。

Q.混ぜると正答率が下がります。やり方が間違っていますか?

A.間違っていません。インターリービングは練習中の正答率が下がりやすい方法で、その引っかかりこそ効いているサインです。「望ましい困難」と呼ばれる良い負荷なので、一時的に解けなくても落ち込まず続けてみてください。

Q.まったく勉強していない分野も最初から混ぜるべきですか?

A.おすすめしません。知識がない分野を混ぜても、判断する以前にただ難しいだけになります。一度ひと通り触れて「なんとなく分かる」状態になった分野どうしを混ぜるのが、いちばん効果的です。

Q.インターリービングと分散学習は何が違うのですか?

A.インターリービングは「複数の種類を混ぜて解く」工夫、分散学習は「間隔をあけて学ぶ」工夫です。別々の原理ですが相性がよく、複数分野を混ぜて回すと自然に間隔もあくため、両方を同時に実践できます。

参考文献

  • Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35, 481–498.
  • Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354–380.

あわせて読みたい学習法ガイド

関連コラム