コラム一覧に戻る
試験講評2026年8月6日11

令和8年度 税理士試験 講評——会計科目で明暗が割れ、税法は物量勝負になった3日間

令和8年8月4日から6日に実施された第76回税理士試験を速報講評。簿記論は難化しボーダー51点、財務諸表論は易化して65点。税法は難問より解答量で差がつく構成でした。科目別の傾向とSNSの反応をまとめます。

令和8年8月4日(火)から6日(木)までの3日間、令和8年度(第76回)税理士試験が実施されました。初日が簿記論・財務諸表論・消費税法または酒税法、2日目が法人税法・相続税法・所得税法、最終日が国税徴収法・固定資産税・住民税または事業税という例年どおりの日程です。猛暑のなか3日間を走り切った受験生の皆さん、本当にお疲れさまでした。

この記事では、試験直後に公開された受験指導校の解答速報と当日講評、そしてSNS上の受験生の自己採点報告や感想をもとに、科目別の出題傾向と難易度、全体の講評を速報としてまとめます。先に全体像を要約すると、今年は極端な超難化も超易化もない一方で、会計2科目のあいだで難易度がはっきり割れ、税法科目は難問よりも解答量とスピードで差がつく構成に寄った年でした。

なお本記事は最終日当日夜時点の速報情報に基づく講評です。ボーダーラインは各校の予想配点による暫定値であり、実際の採点では傾斜配点が入ります。確定的な難易度評価が明らかになるのは、11月27日(金)の合格発表時です。

総評——会計科目で明暗が割れ、税法は物量勝負

今年を最も象徴していたのが、初日の会計2科目の明暗です。資格の大原のボーダーライン予想は、簿記論が51点(合格確実ラインは59点)と例年より低く、対して財務諸表論は65点(同72点)と高い水準でした。ネットスクールの予想も簿記論58点、財務諸表論62点から64点と、方向性は一致しています。同じ日の午前と午後で、難化と易化がきれいに分かれた形です。

ボーダーラインの読み方を補足すると、この数字は「これくらい取れていれば合格の可能性がある」という予想ラインです。数値が低いほど、受験生全体の得点が伸びなかった、つまり試験が難しかったことを意味します。簿記論の51点は近年でも低めの部類で、財務諸表論の65点は高めです。

一方、税法科目に共通していたのは、難問や奇問ではなく解答量とスピードで差がつく設計でした。住民税・固定資産税・事業税・所得税のいずれについても「論点自体はオーソドックスだが分量が多い」という評価が並んでいます。知識の深さより、覚えた知識を制限時間内に答案として書き切る処理能力が問われた年と言えます。

今年の特殊事情——熊本会場が地震の影響で延期

令和8年度の試験を語るうえで外せないのが、熊本県会場の延期です。令和8年熊本地震の発生により、試験会場であるグランメッセ熊本の使用見込みが立たなくなったことなどを理由に、熊本県での試験は延期されました。

  • 対象は熊本県会場の受験予定者1,008名。
  • 再試験は令和8年10月下旬以降に実施される予定。
  • 再試験会場は原則として同一の試験地(熊本県内)に設けられるが、事情により他の試験地での受験を依頼する場合もある。
  • 再試験には現在手元にある受験票が必要になるため、大切に保管する必要がある。

SNS上でも「熊本の人は延期になったことを忘れていませんか。まだ勉強を頑張っているかと思います」という投稿が見られました。他会場の受験生が解放感に浸るなかで、あと2か月以上にわたって学習継続を強いられる受験生がいることは、今年を振り返るうえで記録しておくべき事実です。詳細は国税庁のホームページで随時案内されます。

初日の講評——簿記論は難化、財務諸表論は易化

簿記論は今年の難化科目です。第一問は在外支店や為替予約に関する出題が難しく、第二問は有形固定資産や減損など比較的取り組みやすい構成でした。差がついたのは第三問で、簿記一巡や推定簿記、キャッシュ・フロー計算書の組み換えが絡む形式に対して、受験生から不満の声が多く上がりました。

ただし、この第三問については別の見方もあります。簿記一巡や推定簿記は公認会計士試験の受験生がほとんど扱わない論点であるため、併願組と競合する場面では税理士受験生にとってむしろ有利に働くという指摘です。ボーダー51点という低さが難易度を物語っており、SNSでは「傾斜配点がかなりかかりそう」という不安の声も目立ちました。

対照的に財務諸表論は標準からやや易しめでした。繰延資産や減損といった基本的・典型的な論点が中心で、「理論・計算ともに納得して書けた」という前向きな評価が多数を占めています。ボーダー65点、合格確実ライン72点という高い水準は、取れる問題を落とさなかったかどうかが勝負だったことを示します。裏を返せばケアレスミスが致命傷になる年で、「簡単だと思ったのに自己採点したら届いていなかった」という報告も見られました。

同じ初日に実施された消費税法は、理論と計算で評価が分かれました。理論は「かなり簡単だった」「答練で見たものが多かった」と易化評価が優勢だった一方、計算は「クセのある問題でボリュームがやや多め」という感想が散見されます。理論で確実に稼ぎ、計算でどこまで守れたかという構図でした。

2日目の講評——国税3法は標準、ただし所得税は時間との戦い

法人税法は全体として標準的な難易度でした。理論では資産の低額譲渡を踏まえた諸々の取扱いと、組合の課税関係が問われ、大原は「一部解答しづらいものもあった」と評しています。最後の設問は人格のない社団等に関する内容でした。税率に関する出題もあり、試験直前にこの論点を指摘していた講師の予想が的中した形です。計算は総合問題がオーソドックスな内容で、個別問題はリースに関する出題でした。

相続税法は理論と計算で性格が分かれました。理論は事例問題2題の出題で、問1は難度が高く解答することが難しい一方、問2は比較的解きやすい問題だったとされています。計算は総合問題1題で、一部に難度の高い項目はあったものの、全体としては解きやすい印象という評価でした。理論の問1をどう処理したかが差になったと見られます。

所得税法で注目したいのは、改正論点の扱いです。理論は問1が保険金、問2が青色申告特別控除でした。大原は、近年の改正で追加され本命視されていた特定親族特別控除の出題はなかった一方で、来年に改正を控えている青色申告特別控除が出題されたと指摘しています。改正論点は「直近の改正が出る」と決め打ちできない、という教訓が残る出題でした。

所得税法の計算は近年同様の1題形式でしたが、複数の納税者についてそれぞれ計算する必要があり、しかも行政書士業というあまり見ない設定であったため、総じて時間を要する問題でした。SNSでは「試験委員が相続を好きすぎる」という声が複数上がるほど相続絡みの出題が目立った一方、理論の解答用紙が2枚と少なく「30分かからず終わって計算に移った」「1時間30分で解き終わって逆に心配になった」という報告も見られました。

最終日の講評——住民税の難化と、記述力を問う国税徴収法

国税徴収法は第一問が解答しやすい問題で、差がついたのは第二問でした。大原は「第二次納税義務の判断ができても、その記述が難しい問題」と評しています。正しい結論にたどり着けることと、それを制限時間内に答案として成立させられることは別の能力だと突きつけられた出題です。

固定資産税は、第一問に一部解答しづらい出題があったものの概ね解答可能な内容で、第二問は全体的な難易度は高くないもののボリュームが多い構成でした。理論の出来と、計算の失点をどこまで抑えられたかが合否を分けそうです。

最終科目の住民税は、今年の隠れた難化科目でした。理論は割の問題と非課税措置の問題という王道の論点で、確実に得点したいところです。問題は計算で、ボリュームが多いうえに論点も幅広く、受験生からは「今年の住民税は理論も計算も量が多すぎる。去年までがボーナスだった」「酒税法・所得税法・住民税を受けたなかで一番ハードだったのが住民税」という声が上がりました。計算では分離短期、特定親族、政党等寄附金、譲渡所得の30万円あたりが論点として挙がっています。所得税法では出題されなかった特定親族関連が住民税で問われたのは対照的です。

事業税は、直前期の模擬試験と類似した出題もありました。解答量が多く資料も多い応用理論が出題されましたが、誰もが正解できる項目をケアレスミスすることなく確実に解答することがポイントとされています。

SNSでの評判——解放感が優勢、そして制度論の再燃

Yahoo!リアルタイム検索における「税理士試験」関連の投稿は、最終日夜の時点でポジティブが81パーセント、ネガティブが19パーセントでした。3日間を走り切った解放感とねぎらいの投稿が大半を占め、試験内容そのものへの不満は相対的に少ない結果です。特徴的だった論調を整理します。

  • 簿記論への戸惑いが最多。現役税理士のアカウントからも「SNSの投稿を見ていると、今年の簿記論は難しかったのだろうか」という観測が複数投稿され、難化がSNS上の共通認識になりつつあります。
  • 最終日の閑散感。「初日だった昨年までと打って変わって、最終日最終科目の住民税・事業税は閑散としていた」という投稿があり、科目による盛り上がりの落差が話題になりました。受験者数の多い簿財や法人税に比べ、ミニ税法は情報も少なく孤独になりやすい構造が改めて可視化されています。
  • 制度論の再燃。「日商簿記1級の保持者は簿記論・財務諸表論を免除してよいのではないか」「大学院による科目免除のあり方を見直すべきだ」といった試験制度そのものへの議論が、今年も試験直後に噴出しました。
  • 生殺し状態への葛藤。「ボーダー以上、合格確実ライン未満」という自己採点結果の受験生から、判断に迷う苦しさを訴える投稿が多く見られました。

また、試験に関連して東京青年税理士連盟の公式アカウントが、投稿内容について「試験ルールの遵守を軽視した不適切な表現でした」として該当投稿を削除し、受験生や関係者に謝罪する事態がありました。同連盟は組織としてコンプライアンス意識の徹底と再発防止に努めるとしています。

出題傾向のまとめ——今年の3つの流れ

今年の試験を通して見えた傾向は、大きく3点に整理できます。

第一に、改正論点の扱いが科目間でばらついたことです。法人税法のリース、住民税の特定親族といった直近の改正が問われた一方、所得税法では本命視されていた特定親族特別控除が外れ、代わりに来年に改正を控えている青色申告特別控除が出題されました。改正論点は「今年の改正が出る」と決め打ちするより、改正の前後両方を押さえる姿勢が求められます。

第二に、税法科目が知識量より処理速度を問う設計に寄っていることです。住民税、固定資産税、事業税、所得税のいずれも「論点は標準的だが分量が多い」という評価で共通していました。理論の暗記だけでなく、本試験と同じ分量を時間内に書き切る訓練の比重が上がっています。

第三に、記述力が合否を分ける場面が増えたことです。国税徴収法の第二問に対する「判断ができても記述が難しい」という評価は象徴的でした。答えが分かることと、採点者に伝わる文章として制限時間内に書けることは別物であり、後者を鍛える演習が必要になっています。

今後のスケジュールと、いま動くべきこと

自己採点は各校の予想配点に基づく暫定値であり、実際の採点では傾斜配点が入ります。とくに簿記論はボーダーが低く傾斜の影響が読みにくいため、確定情報を待つのが賢明です。今後の主なスケジュールは次のとおりです。

  • 各受験指導校による詳細な解答速報の公開——8月7日から8日にかけて順次公開。解答解説会も予定されています。
  • 熊本県会場の再試験——令和8年10月下旬以降。受験票の保管が必要です。
  • 合格発表——令和8年11月27日(金)。

自己採点でボーダーライン上にいる方は、結果を待たずに9月開講の次科目へ動くのが定石とされています。税理士試験は科目合格制であり、合格した科目は生涯有効です。逆に言えば、合否が判明する11月まで3か月以上を空白にしてしまうと、その分だけ官報合格が遠のきます。SNSでも「ボーダー以上、合格確実ライン未満は生殺し状態」という声が多く見られましたが、この層こそ次の一手を早く決めた人が翌年に有利になります。

来年に向けて科目を選び直す方は、今年の傾向を踏まえて検討するとよいでしょう。ミニ税法は学習量が比較的少なく短期合格を狙いやすい一方、今年の住民税のように年度によって分量が跳ね上がるリスクがあります。国税徴収法は理論中心で計算がないため、暗記の型が確立している人には相性がよい科目です。

スキマ資格で、税理士試験の学習を無料で続ける

試験が終わった直後に学習を完全に止めてしまうと、積み上げた知識は驚くほど早く目減りします。合否を待つ数か月も、来年に向けた再挑戦の期間も、鍵になるのは学習の習慣を切らさないことです。

スキマ資格では、税理士試験の一問一答とまとめノートを、登録なしでも1問から無料で使えます。簿記論・財務諸表論・法人税法・所得税法・相続税法・消費税法といった科目別に用意しているため、次に受ける科目の下地づくりにも、合格を狙う科目の維持にも使えます。通勤や昼休みのスキマ時間に1問ずつ解けば、間隔をあけた復習が自然に回り、知識の貯金を目減りさせずに済みます。

まとめノートは章ごとの穴埋め形式で、要点を自分の手で埋めながら知識を整理できます。理論暗記の型づくりにも、久しぶりの科目を思い出す作業にも向いています。間違えた問題は自動で記録されるので、苦手分野の把握もかんたんです。3日間の疲れをしっかり癒やしたら、次の目標に向けた1問目を気軽に始めてみてください。利用はすべて無料です。

税理士試験の学習を無料で始める

よくある質問

Q.令和8年度(第76回)税理士試験の難易度はどうでしたか?

A.速報ベースでは、極端な超難化も超易化もない年でした。ただし科目差が大きく、簿記論は難化してボーダーライン予想が51点(合格確実ライン59点)と低め、財務諸表論は易化して65点(同72点)と高めでした。税法科目は難問より解答量で差がつく構成で、とくに住民税は分量が多く難化したとの声が目立ちます。確定的な評価は11月27日の合格発表を待つ必要があります。

Q.熊本県会場の試験はどうなりましたか?

A.令和8年熊本地震の影響で、試験会場であるグランメッセ熊本の使用見込みが立たなくなったため、熊本県での試験は延期されました。対象は受験予定者1,008名で、再試験は令和8年10月下旬以降に実施される予定です。再試験には現在手元にある受験票が必要になるため、大切に保管してください。会場は原則として熊本県内に設けられますが、事情により他の試験地での受験を依頼される場合もあります。詳細は国税庁のホームページで案内されます。

Q.令和8年度税理士試験の合格発表はいつですか?

A.令和8年11月27日(金)です。なお、各受験指導校による詳細な解答速報は8月7日から8日にかけて順次公開され、解答解説会も予定されています。自己採点はあくまで各校の予想配点に基づく暫定値であり、実際の採点では傾斜配点が入るため、ボーダーライン付近の場合は結果を待つ必要があります。

Q.自己採点がボーダーライン上でした。次の科目の勉強は始めるべきですか?

A.一般には、結果を待たずに9月開講の次科目へ動くのが定石とされています。税理士試験は科目合格制で合格科目は生涯有効ですが、合否が判明する11月まで3か月以上を空白にすると、その分だけ官報合格が遠のくためです。ボーダー以上・合格確実ライン未満という層はもっとも判断に迷いますが、早く次の一手を決めた人が翌年に有利になります。

参考文献

  • 国税庁「税理士試験」および「令和8年度(第76回)税理士試験公告」(試験期日・試験地・合格発表日などの実施要領、熊本県会場の延期に関する案内)。
  • 資格の大原 税理士講座「令和8年度(第76回)税理士試験 解答速報」(各科目の当日の手応え・講評、ボーダーライン予想)。
  • ネットスクール「令和8年度(第76回)税理士試験 解答速報特設サイト」(模範解答、当日講評ライブ、ボーダーライン予想)。
  • X(旧Twitter)上の受験生による自己採点報告・感想(令和8年8月6日夜時点の反応を参照)。

関連コラム