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労災・雇用関連

業務災害と通勤災害の違い

労災保険給付には大きく分けて「業務災害」と「通勤災害」があり、社労士試験では給付名称・待期期間・自己負担の有無など細かい論点が問われます。業務災害は業務遂行性・業務起因性が要件となり、給付名称に「補償」が付されるのが特徴です。一方、通勤災害は労災保険法7条2項で定義される合理的経路・方法による通勤上の災害で、給付名称に「補償」は付かず、休業給付は休業4日目から支給される点が共通しますが、待期期間中の事業主補償義務がない点が大きな違いです。本記事では条文番号と数値を踏まえて差異を整理します。

比較表で見る違い

観点業務災害通勤災害
根拠条文労災法7条1項1号労災法7条1項3号・2項
要件業務遂行性+業務起因性住居と就業場所間の合理的経路・方法
給付名称療養補償給付・休業補償給付等(「補償」あり)療養給付・休業給付等(「補償」なし)
一部負担金なし原則200円(健保日雇は100円)
待期3日間の補償事業主が平均賃金60%を補償(労基法76条)事業主補償義務なし
休業給付の支給開始休業4日目から休業4日目から
逸脱・中断概念なし逸脱・中断中および以後は不支給(日用品購入等の例外あり)
複数業務要因災害別枠(2020年9月新設)対象外

それぞれの詳しい解説

A業務災害

労災保険法7条1項1号に定める、労働者の業務上の負傷・疾病・障害・死亡をいいます。認定には業務遂行性(事業主の支配下にあること)と業務起因性(業務と災害との相当因果関係)の双方が必要です。給付には療養補償給付・休業補償給付・障害補償給付・遺族補償給付・葬祭料・傷病補償年金・介護補償給付があり、「補償」の文字が付きます。休業補償給付は給付基礎日額の60%+特別支給金20%(合計80%)が休業4日目から支給されます。待期3日間は労基法76条により事業主が平均賃金の60%を補償する義務を負います。なお、2020年9月施行の改正で複数事業労働者の複数業務要因災害(脳・心臓疾患、精神障害等)が新設され、複数事業の業務上の負荷を総合評価する枠組みが追加されました。

  • 給付名称に「補償」が付く

  • 事業主に待期3日間の補償義務

  • 一部負担金なし

B通勤災害

労災保険法7条1項3号・2項に定める、労働者の通勤による負傷・疾病・障害・死亡をいいます。「通勤」とは住居と就業場所との間、複数就業先間、単身赴任先と帰省先間を、合理的な経路・方法で往復することを指し、業務の性質を有するものは除かれます。給付名称は療養給付・休業給付・障害給付・遺族給付・葬祭給付・傷病年金・介護給付で「補償」が付きません。療養給付には原則200円(健康保険日雇特例被保険者は100円)の一部負担金があり、初回の休業給付から控除されます。休業給付は休業4日目から給付基礎日額60%+特別支給金20%が支給されますが、待期3日間の事業主補償義務はありません。逸脱・中断中およびその後は原則不支給ですが、日用品購入や病院受診等の日常生活上必要な行為で最小限度のものは、終了後合理的経路に復した場合に通勤と認められます。

  • 給付名称に「補償」が付かない

  • 一部負担金200円

  • 逸脱・中断ルールあり

試験対策のポイント

「補償」の有無で見分ける。業務災害は労基法上の事業主補償義務を労災が肩代わりするため「補償」が付く。通勤は事業主に責任がないため「補償」なし+一部負担金200円。

理解度チェック(3問)

Q1. 労災保険給付について、業務災害と通勤災害の違いに関する記述として正しいものはどれか。

  1. 1業務災害・通勤災害ともに給付名称に「補償」が付される。
  2. 2通勤災害には療養給付の一部負担金として原則200円が課される。
  3. 3通勤災害でも待期3日間は事業主が平均賃金の60%を補償する義務を負う。
  4. 4休業補償給付は休業初日から支給される。
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正解:2. 通勤災害には療養給付の一部負担金として原則200円が課される。

通勤災害の療養給付には原則200円(健保日雇特例は100円)の一部負担金がある。業務災害には「補償」が付くが通勤災害には付かない。事業主の待期補償義務は業務災害のみ(労基法76条)。休業給付・休業補償給付ともに4日目から支給。

Q2. 通勤災害における逸脱・中断の取扱いとして正しいものはどれか。

  1. 1逸脱・中断があれば、その後合理的経路に復しても通勤と認められない。
  2. 2日用品の購入で最小限度のものは、終了後合理的経路に復した時点から通勤と認められる。
  3. 3病院での受診は逸脱に該当し、その後一切通勤と認められない。
  4. 4選挙権の行使は逸脱・中断の例外として認められない。
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正解:2. 日用品の購入で最小限度のものは、終了後合理的経路に復した時点から通勤と認められる。

労災法7条3項により、日用品購入・病院受診・選挙権行使等の日常生活上必要な行為で最小限度のものは、終了後合理的経路に復した場合に再び通勤と認められる(逸脱・中断中は除く)。

Q3. 業務災害の認定要件として最も適切なものはどれか。

  1. 1業務遂行性のみで足りる。
  2. 2業務起因性のみで足りる。
  3. 3業務遂行性と業務起因性の双方が必要である。
  4. 4労働者の主観的判断のみで認定される。
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正解:3. 業務遂行性と業務起因性の双方が必要である。

業務災害の認定には事業主の支配下にあること(業務遂行性)と業務と災害との相当因果関係(業務起因性)の双方が必要。

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