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労災・雇用関連

労災休業補償給付と雇用保険傷病手当の違い

社労士試験では「休業補償給付」「傷病手当」「傷病手当金」と類似名称が並び、根拠法・対象者・給付額の違いを問われます。労災保険の休業補償給付(労災法14条)は労働者が業務上の傷病により労働不能となった場合の所得補償です。一方、雇用保険の傷病手当(雇保法37条)は受給資格者が求職申込み後に傷病により職業に就くことができない場合に基本手当に代えて支給されるもので、性質も対象期間もまったく異なります。本記事では両者の根拠条文・要件・給付額・期間を比較し、健康保険の傷病手当金との関係も整理します。

比較表で見る違い

観点労災・休業補償給付雇用保険・傷病手当
根拠条文労災法14条雇保法37条
対象者業務上の傷病で休業中の労働者基本手当の受給資格者で求職申込み後に傷病となった者
原因業務上の傷病業務外の傷病(15日以上労務不能)
給付額給付基礎日額の60%+特別支給金20%(計80%)基本手当日額と同額
待期通算3日間(事業主補償あり)基本手当の待期7日間と通算
期間療養のため労務不能の限り(1年6月超で傷病補償年金へ)所定給付日数の範囲内
健保傷病手当金との併給原則併給不可(労災優先)健保傷病手当金は併給不可
事業主補償義務あり(待期3日間)なし

それぞれの詳しい解説

A労災・休業補償給付

労災保険法14条に基づく給付で、労働者が業務上の負傷・疾病による療養のため労働することができず、賃金を受けない日の第4日目から支給されます。給付額は給付基礎日額の60%、これに加えて社会復帰促進等事業から休業特別支給金として20%が支給され、合計で給付基礎日額の80%相当が補填されます。待期3日間は事業主が労基法76条により平均賃金の60%を補償する義務を負います。療養開始後1年6か月を経過しても治らず、傷病等級1〜3級に該当する場合は傷病補償年金(労災法18条)に切り替わります。雇用保険の基本手当との併給は、労災給付を受給している期間中は基本手当の支給対象とならない(労務不能のため)ため、実質的に重複しません。健康保険の傷病手当金とは併給不可で、業務上は労災が優先されます。

  • 給付基礎日額60%+特別支給金20%

  • 休業4日目から支給

  • 1年6月超で傷病補償年金へ移行可

B雇用保険・傷病手当

雇用保険法37条に基づく給付で、基本手当の受給資格者が公共職業安定所に求職の申込みをした後に、疾病・負傷のため15日以上職業に就くことができない場合に、基本手当に代えて支給されます(14日以内なら基本手当が支給される)。給付額は基本手当日額と同額で、所定給付日数を限度とします。基本手当の待期7日間とは通算され、別途待期は設けません。業務外の傷病が対象で、健康保険の傷病手当金との併給はできません(雇保法37条4項)。なお、傷病が労災保険の対象となる場合(業務上)はそもそも基本手当の受給資格を満たさない(労務不能で求職活動できない)ため、傷病手当の対象外です。退職後に傷病となった求職者を、所得保障の観点から救済する制度といえます。

  • 基本手当の代替

  • 15日以上労務不能が要件

  • 健保傷病手当金と併給不可

試験対策のポイント

労災休業補償給付は「在職中・業務上」、雇保傷病手当は「離職後・求職中・業務外」と覚える。給付額は労災が60%+特別支給金20%、雇保は基本手当日額と同額。

理解度チェック(3問)

Q1. 労災保険の休業補償給付と雇用保険の傷病手当に関する記述として正しいものはどれか。

  1. 1労災休業補償給付は給付基礎日額の80%が労災保険から直接支給される。
  2. 2雇用保険の傷病手当は求職申込み前の傷病でも支給される。
  3. 3労災休業補償給付は休業の第4日目から支給される。
  4. 4雇用保険の傷病手当は健康保険の傷病手当金と併給できる。
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正解:3. 労災休業補償給付は休業の第4日目から支給される。

休業補償給付は労災法14条により休業4日目から給付基礎日額の60%が支給され、別途特別支給金20%が加算される。傷病手当は求職申込み後の傷病が対象で、健保傷病手当金とは併給不可。

Q2. 雇用保険の傷病手当が支給される要件として正しいものはどれか。

  1. 1求職申込み後、疾病・負傷で7日以上職業に就けないこと。
  2. 2求職申込み後、疾病・負傷で15日以上職業に就けないこと。
  3. 3在職中に業務上の傷病となったこと。
  4. 4基本手当の所定給付日数を超えて職業に就けないこと。
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正解:2. 求職申込み後、疾病・負傷で15日以上職業に就けないこと。

雇保法37条により、受給資格者が求職申込み後に疾病・負傷で15日以上職業に就けない場合、基本手当に代えて傷病手当が支給される(14日以内は基本手当)。

Q3. 休業補償給付と傷病補償年金の関係について正しいものはどれか。

  1. 1療養開始後1年を経過すると傷病補償年金に切り替わる。
  2. 2療養開始後1年6か月経過時に傷病等級1〜3級に該当すると傷病補償年金に切り替わる。
  3. 3傷病補償年金が支給されると休業補償給付も併給される。
  4. 4傷病補償年金は申請に基づき支給される。
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正解:2. 療養開始後1年6か月経過時に傷病等級1〜3級に該当すると傷病補償年金に切り替わる。

労災法18条により、療養開始後1年6か月経過しても治らず傷病等級1〜3級に該当する場合、職権により傷病補償年金に移行し、休業補償給付は支給されない。

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