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労働基準法・労働関係

労基法上の労働者と労組法上の労働者の違い

「労働者」概念は法律によって範囲が異なります。労基法9条は「事業に使用される者で賃金を支払われる者」を労働者とし、最高裁は使用従属性(指揮監督下の労務、報酬の労務対償性)を中心に判断します(横浜南労基署長事件)。労組法3条は「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と規定し、団体交渉による保護の必要性から労基法より広く解釈されます(INAXメンテナンス事件、ビクターサービス事件等)。社労士試験では両者の判断要素・該当例の差が頻出論点で、近年はフリーランス・ギグワーカーの該当性も問われます。

比較表で見る違い

観点労基法上の労働者労組法上の労働者
根拠条文労基法9条労組法3条
定義事業に使用される者で賃金を支払われる者賃金等の収入により生活する者
判断基準使用従属性(指揮監督・労務対償性)事業組織への組入れ・契約内容の一方的決定等
判断の厳格性比較的厳格広く解釈される
保護目的労働条件の最低基準確保団体交渉権の保障
該当例(拡大)原則として正社員・契約社員・パート等CXメンテナンス受託者、楽団員、コンビニ店長(一部)等
判例横浜南労基署長事件(H8.11.28)INAXメンテナンス事件(H23.4.12)等
使用者概念事業主・事業の経営担当者等(10条)雇用主のほか親会社等も含み得る

それぞれの詳しい解説

A労基法上の労働者

労基法9条は労働者を「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義します。最高裁は使用従属性を①仕事の依頼・業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無、②業務遂行上の指揮監督の有無、③拘束性、④代替性、⑤報酬の労務対償性、⑥事業者性、⑦専属性等から総合判断(横浜南労基署長事件、平成8.11.28)。請負契約・委任契約名目でも実態が雇用なら労働者と認定(労働者性の判断について:昭和60.12.19労働基準法研究会報告)。フリーランス・業務委託でも実質判断で労働者性を肯定する例があります。

  • 労基法9条「事業に使用され賃金を支払われる者」

  • 使用従属性を多要素で総合判断

  • 契約形式より実態を重視

  • 横浜南労基署長事件等が判断基準を示す

B労組法上の労働者

労組法3条は労働者を「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と規定。最高裁は労組法上の労働者性を①事業組織への組入れ、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性、④業務依頼への諾否の自由の不存在、⑤指揮監督下の業務遂行・場所的時間的拘束、⑥独立事業者性の希薄さから判断(INAXメンテナンス事件H23.4.12、ビクターサービスエンジニアリング事件H24.2.21等)。労基法上の労働者でなくとも労組法上の労働者として団交権が認められる例があり(個人代行店等)、団体交渉拒否は不当労働行為(労組法7条2号)となります。

  • 労組法3条「賃金等で生活する者」

  • 事業組織組入れ・契約定型性等から判断

  • 労基法より広い概念

  • 団交拒否は不当労働行為(労組法7条2号)

試験対策のポイント

労基法は「使用従属性」で厳格、労組法は団交保護のため「広く」解釈。労組法上は労働者でも労基法上は非労働者となる事例があります。

理解度チェック(3問)

Q1. 労基法上の労働者性の判断要素として中心的なものはどれか。

  1. 1事業組織への組入れ
  2. 2使用従属性(指揮監督・労務対償性)
  3. 3契約内容の定型性
  4. 4労働組合への加入の有無
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正解:2. 使用従属性(指揮監督・労務対償性)

労基法9条の労働者性判断は最高裁横浜南労基署長事件(H8.11.28)以来、使用従属性(指揮監督下の労務、報酬の労務対償性)を中心に、諾否の自由・代替性・拘束性・事業者性・専属性等を総合考慮します。事業組織への組入れ・契約内容の定型性は労組法上の労働者性判断要素で、両者の判断基準の違いが社労士試験頻出論点です。

Q2. 労組法上の労働者に関する記述として正しいものはどれか。

  1. 1労基法上の労働者と完全に同一概念である
  2. 2労基法上の労働者より狭く限定される
  3. 3労基法上の労働者でなくても労組法上の労働者となる場合がある
  4. 4労働組合員のみが労組法上の労働者である
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正解:3. 労基法上の労働者でなくても労組法上の労働者となる場合がある

INAXメンテナンス事件(H23.4.12)等で最高裁は、業務委託契約のCXメンテナンス受託者について労基法上の労働者性は否定されつつも労組法上の労働者性を肯定しました。労組法3条は団体交渉による保護の必要性から労基法より広く解釈されます。労組法上の労働者性が肯定されれば団交拒否は不当労働行為となります。

Q3. 労働者性に関する重要判例の組合せとして誤っているものはどれか。

  1. 1横浜南労基署長事件-労基法上の労働者性判断基準
  2. 2INAXメンテナンス事件-労組法上の労働者性肯定
  3. 3ビクターサービス事件-労組法上の労働者性判断
  4. 4プロ野球選手会事件-労基法上の労働者性肯定
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正解:4. プロ野球選手会事件-労基法上の労働者性肯定

プロ野球選手会事件(H16.9.8)は労組法上の労働者性に関する事案で、プロ野球選手も労組法上の労働者であり選手会は労組法上の労働組合に該当すると判断したものです。横浜南労基署長事件は労基法上の労働者性判断基準(使用従属性)を示し、INAXメンテナンス・ビクターサービス事件は労組法上の労働者性を広く認めた判例として整理されます。

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