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労働基準法・労働関係

専門業務型と企画業務型の裁量労働制の違い

裁量労働制は、業務の性質上労働時間の配分等を労働者の裁量に委ね、実労働時間ではなく労使協定等で定めた「みなし労働時間」働いたものとみなす制度です。労基法は専門業務型(38条の3)と企画業務型(38条の4)の2種を規定。前者は研究開発・記者・デザイナー等19業務(2024年4月にM&A業務追加で20業務)、後者は事業運営の企画立案調査分析業務に限定。2024年4月の法改正で専門業務型にも本人同意・撤回手続が導入され、両制度の差は縮小しました。社労士試験では対象業務・導入手続・健康確保措置が頻出です。

比較表で見る違い

観点専門業務型裁量労働制企画業務型裁量労働制
根拠条文労基法38条の3労基法38条の4
対象業務法定20業務(2024年M&A追加)事業運営の企画立案調査分析業務(事業所限定)
導入手続労使協定の締結・届出労使委員会の5分の4以上多数決議・届出
本人同意必要(2024年4月改正で必須化)必要(同意なき適用は不可)
同意撤回可能(2024年4月改正)可能(従来から)
健康・福祉確保措置労使協定で定める労使委員会で定める
苦情処理措置労使協定で定める労使委員会で定める
定期報告不要6か月以内毎に1回、所轄労基署長へ

それぞれの詳しい解説

A専門業務型裁量労働制

労基法38条の3により、研究開発、情報処理システム分析設計、記事取材編集、デザイナー、コピーライター、システムコンサルタント、公認会計士、弁護士、税理士、大学教授、M&Aアドバイザー(2024年4月追加)等の20業務について、労使協定で①対象業務、②みなし労働時間、③労働者の裁量に委ねる旨、④健康・福祉確保措置、⑤苦情処理措置、⑥本人同意(2024年4月改正で追加)、⑦同意撤回手続、⑧協定有効期間、⑨記録保存を定め所轄労基署長に届け出ます。本人同意なき適用は不可。深夜・休日労働の割増賃金は別途必要。

  • 法定20業務に限定(2024年M&A追加)

  • 労使協定の締結・届出で導入

  • 2024年改正で本人同意・撤回権必須化

  • 深夜・休日労働の割増賃金は別途必要

B企画業務型裁量労働制

労基法38条の4により、事業運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析業務を対象とし、事業の運営に関する事項について企画する事業場(本社・本店等)に限定されます。導入には労使委員会を設置し、委員5分の4以上の多数決議で①対象業務、②対象労働者の範囲、③みなし労働時間、④健康福祉確保措置、⑤苦情処理措置、⑥本人同意・撤回手続、⑦記録保存等を定め所轄労基署長に届け出ます。決議の届出後6か月以内毎に1回の定期報告義務があり、健康福祉確保措置の実施状況等を報告します。

  • 事業運営の企画立案調査分析業務に限定

  • 労使委員会5分の4以上の多数決議

  • 本人同意・撤回権が必須

  • 6か月以内毎の定期報告義務あり

試験対策のポイント

専門業務型は20業務で労使協定、企画業務型は企画立案で労使委員会5分の4決議。2024年改正で両者とも本人同意・撤回権が必須化されました。

理解度チェック(3問)

Q1. 企画業務型裁量労働制の導入手続として正しいものはどれか。

  1. 1労使協定の締結・届出
  2. 2就業規則の変更のみ
  3. 3労使委員会の5分の4以上の多数決議・届出
  4. 4労働者の過半数の同意のみ
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正解:3. 労使委員会の5分の4以上の多数決議・届出

企画業務型裁量労働制の導入には労使委員会を設置し、その委員の5分の4以上の多数による決議が必要で、所轄労働基準監督署長への届出義務があります(労基法38条の4第1項)。決議事項には対象業務、対象労働者範囲、みなし労働時間、健康福祉確保措置、本人同意・撤回手続等を含みます。専門業務型の労使協定とは導入手続が異なります。

Q2. 2024年4月施行の裁量労働制改正に関する記述として正しいものはどれか。

  1. 1企画業務型のみに本人同意制度が新設された
  2. 2専門業務型に本人同意・撤回手続が必須化された
  3. 3両制度ともに対象業務が縮小された
  4. 4労使協定の有効期間が無期限化された
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正解:2. 専門業務型に本人同意・撤回手続が必須化された

2024年4月施行の改正により、従来本人同意が法定されていなかった専門業務型裁量労働制についても、本人同意及び撤回手続を労使協定で定めることが必須化されました。同時にM&Aアドバイザー業務が対象に追加され、健康福祉確保措置の充実等も求められます。社労士試験2024年以降の重要改正論点です。

Q3. 裁量労働制が適用された場合の労働時間に関する記述として誤っているものはどれか。

  1. 1みなし労働時間が法定労働時間を超える場合は時間外労働の割増賃金が必要
  2. 2深夜労働の割増賃金は別途必要
  3. 3休日労働の割増賃金は別途必要
  4. 4実労働時間に応じた賃金支払義務がある
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正解:4. 実労働時間に応じた賃金支払義務がある

裁量労働制は実労働時間ではなく労使協定・労使委員会決議で定めた「みなし労働時間」労働したものとみなす制度のため、実労働時間に応じた賃金支払義務はありません。ただし、みなし時間が法定労働時間(1日8時間)を超える部分は時間外労働として割増賃金が必要、深夜・休日労働は別途実時間に基づき割増賃金支払義務があります。

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