違いシリーズ一覧に戻る
第2章 人体の働き

能動輸送と受動輸送の違い

細胞膜を介した物質の移動には、エネルギーを使って濃度勾配に逆らう「能動輸送」と、エネルギーを使わず濃度勾配に従う「受動輸送」があります。登録販売者試験では消化管からの薬の吸収や、腎臓・神経細胞の機能を理解する基礎として問われます。「Na-Kポンプは能動輸送」「酸素や脂溶性薬物の単純拡散は受動輸送」など、典型例とエネルギー要否・方向性をセットで覚えることが重要です。両者の違いを整理し、薬物動態の理解につなげましょう。

比較表で見る違い

観点能動輸送受動輸送
ATP(エネルギー)必要不要
濃度勾配との関係逆らって輸送(低→高濃度も可)従って輸送(高→低濃度のみ)
輸送タンパク質必要(ポンプ)不要(単純拡散)または必要(促進拡散)
速度の上限あり(ポンプ数で律速)単純拡散は濃度差に比例
代表例Na-K ポンプ、Ca²⁺ ポンプ、プロトンポンプ酸素・二酸化炭素の拡散、脂溶性薬物の吸収
阻害される条件ATP不足・低体温で停止濃度勾配が消失すれば停止
医薬品との関連プロトンポンプ阻害薬の作用点多くの内服薬の消化管吸収機序

それぞれの詳しい解説

A能動輸送

能動輸送はATPなどのエネルギーを利用して、濃度勾配に逆らって物質を細胞膜の片側からもう一方へ運ぶ仕組みです。代表例はナトリウム・カリウムポンプ(Na-K ATPase)で、細胞外へNa⁺を3個排出し、細胞内へK⁺を2個取り込むことで細胞内外のイオン濃度差を維持し、神経伝達や筋収縮の基盤となっています。胃の壁細胞のプロトンポンプは胃酸分泌に関わり、その阻害薬(PPI)は胃酸関連疾患の治療に用いられます。低体温やエネルギー不足ではポンプが停止し、細胞機能が損なわれます。

  • ATPなどのエネルギーを必要とする

  • 濃度勾配に逆らって輸送できる

  • Na-Kポンプ・プロトンポンプが代表例

  • 細胞膜電位の維持に不可欠

  • PPI等の医薬品の作用点となる

B受動輸送

受動輸送はエネルギーを使わず、濃度勾配に従って高濃度側から低濃度側へ物質が移動する仕組みです。脂溶性物質や小分子のガス(酸素・二酸化炭素)は、細胞膜のリン脂質二重層を直接通り抜ける単純拡散により移動します。グルコースなど水溶性物質はチャネルや担体タンパク質を介する促進拡散で移動しますが、これもATPは不要です。多くの内服薬は消化管粘膜から受動輸送によって吸収されるため、脂溶性や分子サイズが薬の吸収速度に大きく影響します。

  • エネルギー(ATP)を必要としない

  • 濃度勾配に従って移動する

  • 単純拡散と促進拡散がある

  • 酸素・脂溶性薬物などが該当

  • 内服薬の消化管吸収の主要な仕組み

試験対策のポイント

「能動はATP使って逆走、受動はエネルギー無しで流れに沿って」と整理し、Na-Kポンプ=能動、酸素や脂溶性薬の吸収=受動という代表例で固定して覚えましょう。

理解度チェック(3問)

Q1. 能動輸送と受動輸送の違いに関する記述として正しいものはどれか。

  1. 1受動輸送はATPを必要とする
  2. 2能動輸送は濃度勾配に逆らって行われる
  3. 3受動輸送は低濃度から高濃度への移動が可能である
  4. 4能動輸送ではタンパク質を必要としない
解答・解説を見る

正解:2. 能動輸送は濃度勾配に逆らって行われる

能動輸送はATPを利用して濃度勾配に逆らった輸送を可能にする仕組みです。ポンプタンパク質が関与し、Na-Kポンプはその代表例で、神経や筋肉の興奮性維持に不可欠な働きをしています。

Q2. 次のうち、能動輸送に分類されるものはどれか。

  1. 1肺胞での酸素の拡散
  2. 2脂溶性薬物の消化管吸収
  3. 3ナトリウム・カリウムポンプ
  4. 4二酸化炭素の細胞膜通過
解答・解説を見る

正解:3. ナトリウム・カリウムポンプ

ナトリウム・カリウムポンプはATPを利用して細胞外へNa⁺を、細胞内へK⁺を運ぶ典型的な能動輸送です。他の選択肢はいずれも濃度勾配に従う受動輸送であり、エネルギーを必要としません。

Q3. 医薬品の消化管吸収に関する記述として正しいものはどれか。

  1. 1多くの内服薬は能動輸送により吸収される
  2. 2脂溶性の高い薬物は受動輸送で吸収されやすい
  3. 3消化管吸収はATPの有無に依存しない
  4. 4吸収速度は薬物の分子量と無関係である
解答・解説を見る

正解:2. 脂溶性の高い薬物は受動輸送で吸収されやすい

脂溶性が高く分子量の小さい薬物は、消化管粘膜の脂質二重層を受動輸送(単純拡散)で通過しやすく吸収率が高くなります。一部の薬物は担体を介した促進拡散や能動輸送で吸収されることもあります。

同じ分野の「違い」記事

登録販売者 記憶定着問題で演習する