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株式会社の組織と運営

会社分割と事業譲渡の違い

会社の事業部門を切り出して他社へ移す場面では、会社分割と事業譲渡のいずれを使うかが実務上の重要論点となる。前者は会社法上の組織再編行為として権利義務が包括的に移転し、後者は売買に類する個別の取引契約として資産・負債を一つずつ移す。承継方法・対価・債権者保護・対抗要件の差を理解することが2級攻略の鍵である。

比較表で見る違い

観点会社分割事業譲渡
法的性質組織再編行為(会社法上の制度)取引行為(売買類似の債権契約)
権利義務の承継分割契約・計画の定めにより包括承継資産・負債・契約ごとの個別承継(特定承継)
対価原則として承継会社の株式(金銭も可)原則として金銭
債務の移転債権者の個別同意なく移転可(債権者保護手続あり)債務引受には債権者の同意が必要
債権者保護会社法上の債権者異議手続が必要法定の異議手続なし(詐害行為等で別途規律)

それぞれの詳しい解説

A会社分割

会社分割は、株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を、分割契約(吸収分割)または分割計画(新設分割)の定めに従って他の会社に包括的に承継させる組織再編行為である。承継の対象は契約で特定するが、対象とされた権利義務は債権者・契約相手方の個別同意を要せず一括で移転する点に特徴がある。対価は承継会社・新設会社の株式が原則で、株主総会の特別決議や債権者異議手続、反対株主の株式買取請求といった会社法上の手続を踏む。

  • 吸収分割と新設分割の2類型がある

  • 権利義務は契約・計画の定めにより包括承継される

  • 原則として株主総会の特別決議が必要

  • 残存債権者を害する濫用的分割には詐害的会社分割の規律が及ぶ

B事業譲渡

事業譲渡は、一定の営業目的のため組織化され機能している有機的一体としての財産(得意先・ノウハウ等の事実関係を含む)を、契約により他社へ移転する取引行為である。承継は資産・負債・契約ごとの個別移転であり、債務を移すには債権者の同意が、契約上の地位を移すには相手方の承諾が必要となる。事業の全部譲渡や重要な一部譲渡には株主総会の特別決議を要し、譲渡会社は原則20年間の競業避止義務を負う。

  • 有機的一体としての機能的財産の移転

  • 債務の移転・契約承継には個別の同意・承諾が必要

  • 事業の全部・重要な一部の譲渡は特別決議が必要

  • 譲渡会社は原則20年の競業避止義務を負う(会社法21条)

試験対策のポイント

会社分割は「組織法上の包括承継」、事業譲渡は「取引法上の個別承継」。債務が債権者の同意なしに動くのが分割、動かすには同意が要るのが事業譲渡と押さえる。

理解度チェック(3問)

Q1. A社が一事業部門をB社に移転するにあたり、当該部門の取引先との契約や負債を、各債権者・相手方の個別同意を得ずに一括してB社へ承継させたい。最も適した手法はどれか。

  1. 1事業譲渡
  2. 2会社分割
  3. 3株式譲渡
  4. 4合併
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正解:2. 会社分割

権利義務を相手方の個別同意なく一括承継させたい場合は、組織再編行為である会社分割が適する。分割契約・計画で対象とした権利義務は包括的に移転するためである。事業譲渡は資産・負債・契約ごとの個別承継であり、債務移転には債権者の同意、契約承継には相手方の承諾が必要となる。株式譲渡は会社の支配権が移るだけで事業部門の切り出しにはならない。よって正解は会社分割である。

Q2. 事業譲渡における譲渡会社の競業避止義務に関する次の記述のうち、会社法上原則として正しいものはどれか。

  1. 1当事者間で別段の定めがなくても、同一市町村等の区域内で20年間は同一事業を行えない
  2. 2競業避止義務は一切生じない
  3. 3譲渡会社は永久に競業できない
  4. 4譲受会社が競業避止義務を負う
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正解:1. 当事者間で別段の定めがなくても、同一市町村等の区域内で20年間は同一事業を行えない

会社法21条1項は、事業を譲渡した会社は当事者の別段の意思表示がない限り、同一市町村および隣接市町村の区域内で20年間は同一の事業を行ってはならないと定める。これは譲渡した事業の価値(得意先等)を譲受会社に確保させる趣旨である。義務を負うのは譲渡会社であり、特約で30年まで伸長できるが永久ではない。よって、別段の定めがなければ20年の競業避止義務を負うとする記述が正しい。

Q3. 会社分割と事業譲渡の債権者保護に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

  1. 1いずれも会社法上の債権者異議手続が必須である
  2. 2会社分割には債権者異議手続があるが、事業譲渡には法定の異議手続がない
  3. 3事業譲渡には債権者異議手続があるが、会社分割にはない
  4. 4いずれも債権者保護の仕組みは存在しない
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正解:2. 会社分割には債権者異議手続があるが、事業譲渡には法定の異議手続がない

会社分割では債権者の同意なく債務が移転しうるため、会社法は分割会社・承継会社の債権者に異議を述べる機会を与える債権者異議手続を定めている。一方、事業譲渡は取引行為であり債務移転に債権者の同意を要するため、会社法上の特別な異議手続は設けられていない。残存債権者を害する場合は詐害的会社分割の規律や詐害行為取消権で別途対応される。したがって、分割には異議手続があり事業譲渡にはないとする記述が適切である。

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