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企業経営理論難易度: 2019年度

中小企業診断士 過去問企業経営理論 第2問

問題

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。 メーカーA社では、経営陣が「次世代の主力製品」と鳴り物入りで導入した製品Xについて、累積損失が膨らんだため、市場から撤退する決定がなされた。実は5年ほど前から、製品Xには深刻な問題があると気づいていた現場管理者が数人いた。生産上のトラブルが続き、そのコストを価格に転嫁すれば競争力を失うことに気づいていたのである。しかしこの情報が、経営陣に伝わるには時間がかかりすぎた。その原因を探求すると、以下のような状況であったことが分かった。 生産現場の管理者たちは、改善運動で成功してきた実績と有能感を持っていた。当初は、改善運動で問題が処理できると考えていたが、マーケティング面の問題がより深刻であることが分かった。そこで彼らは、製品Xのプロジェクトマネジャー(以下、「ミドル」という)に問題の深刻さを伝える報告書を作成した。A社では、こうした報告書には改善提案を付けることが当然視されていたため、時間をかけて詳細なデータを付けた。 しかしこの精緻な報告書は、製品Xの導入決定の際に、トップ主導で行った生産やマーケティングの調査を根底から覆すような内容を含んでいた。そこでミドルは、まず現場管理者たちに、その報告書に記載されたデータが正しいのか詳しく調べるよう指示した。報告書が正しそうだと分かると今度は、経営陣に悲観的な情報を小出しに流し始めた。経営陣からはいつも「説明資料が長すぎる」と叱られていたので、資料のデータを大幅に割愛し、問題の深刻さをオブラートに包み、現場では事態を十分掌握しているように表現していた。そのため経営陣は製品Xについて、引き続き「次世代の主力製品」と熱い期待を語り続け、必要な財務的資源も保証していったのである。 現場の管理者たちは問題点を指摘したにもかかわらず、経営陣は製品Xへの期待を語り、ミドルからは再検討の要請がなされたため混乱した。そのうち彼らは、製品Xに悲観的な資料を作ることを控え、責任はミドルにあると考えるようになった。やがて、納得したわけではなかったが、あまり気に留めることもなくなった。 (設問2)あなたがコンサルタントとしてA社の組織を変革する際に、その方針や手段として、最も適切なものはどれか。

選択肢

  1. 1Off‑JTのワークショップやセミナーを活用し、真実を明らかにしたからといって不利な立場に立たされることはない、という態度を経営者が率先して組織メンバーに身に付けさせる。
  2. 2与えられた目標について利得の可能性を最大化し、損失の可能性を最小化するよう、組織のメンバーを動機づける。
  3. 3管理職には自らの役割を明確にさせ、それを強化するために、他者に指示を出したり、他者を傷つけることのないよう、伝える情報の範囲を自身でコントロールするよう訓練する。
  4. 4組織のメンバーは個人の責任と業績に応じて適切に報酬を得ることができる、という理念を定着させる。
  5. 5組織の和を重視し、組織メンバーや既存の制度を脅かすような言動は慎むよう訓練する。

正解

1. Off‑JTのワークショップやセミナーを活用し、真実を明らかにしたからといって不利な立場に立たされることはない、という態度を経営者が率先して組織メンバーに身に付けさせる。

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解説

A社の問題は、不利な情報の隠蔽や責任回避といった組織防衛ルーチンに起因する。これを変革するには、アージリスの「モデルⅡ理論」(学習する組織への転換)が必要で、心理的安全性の確保と率直なコミュニケーションを経営トップから率先して醸成する必要がある。アは「真実を明らかにしても不利益を被らない」という安全な学習風土を経営者主導で構築する方向性で、組織防衛ルーチンの解除に有効であり正しい。イは目標管理的アプローチで個人の損得最大化を促すことで、むしろ不利な情報の隠蔽を助長するリスクがある。ウは情報統制の強化で組織防衛ルーチンを強化するためむしろ逆効果。エは個人責任・業績連動報酬は不利な情報発信のディスインセンティブとなり、隠蔽行動を強化する方向。オは「和を重視し既存制度を脅かす言動を慎む」のはまさにモデルⅠ的組織風土の強化で、変革の障害となる。(出典: 一般社団法人 中小企業診断協会 令和元年度 中小企業診断士1次試験 企業経営理論 第20問 設問2)

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