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科学的勉強法2026年6月14日4

何度読んでも覚えられない理由——再読とマーカーの「わかった気」

教科書の再読やマーカーは「わかった気」を生むが、記憶には残りにくい。なぜ効かないのか、代わりに何をすればいいのかを研究から解説。

教科書を何度も読み返し、大事そうなところにはマーカーもたっぷり。ノートも色とりどりに整えて、「ここまでやったのだから覚えたはず」と思う。なのに、いざ問題を解くと肝心なところが出てこない——身に覚えのある人は、きっと多いはずです。

がっかりする必要はありません。それはあなたの記憶力が悪いからではなく、選んだ勉強法に原因があります。じつは、再読もマーカーも、人気のわりに記憶への効果は高くないことが分かっています。鍵になるのは「流暢性の錯覚(fluency illusion)」。スラスラ読めると「わかった」と感じますが、その心地よい手応えと、本番で何も見ずに出せる力とは、しばしば大きくズレているのです。

この記事では、なぜ再読とマーカーが効きにくいのかという理由から、それを示した代表的な研究、「わかった気」が生まれる脳の仕組み、そして再読を効く勉強に変えるための具体的なやり方までを、順を追って解説します。読み終える頃には、いつもの勉強の「手応え」を、少し疑ってみたくなるはずです。

人気の勉強法が、じつは下位だった

まず、衝撃的な研究から紹介します。Dunlosky ら(2013)は、世の中でよく使われている代表的な10の勉強法を集め、「本当に効果があるのか」を、それまでに積み上げられた膨大な研究をもとに有効性で格付けするという大がかりなレビューを行いました。再読、ハイライト(マーカー)、語呂合わせ、要約、イメージ化、自己説明、練習テスト(思い出す練習)、分散学習——身近な手法がずらりと並びます。

ところが結果は、多くの人の直感を裏切るものでした。だれもが当たり前に使っている「再読」と「ハイライト」は、有用性が低いグループに分類されてしまったのです。まったく無意味というわけではないものの、かけた時間に見合うだけの効果は期待しにくい、という評価でした。学生に「ふだんどう勉強しているか」を尋ねると、再読とマーカーは決まって上位に挙がります。つまり、もっとも人気の勉強法が、もっとも効きにくい部類だった、という皮肉な構図です。

一方で、最高評価の「とくに効果が高い」グループに選ばれたのは、「練習テスト(思い出す練習)」と「分散学習(間隔をあけて学ぶこと)」の二つでした。どちらも、ラクに進む勉強ではありません。思い出すのは頭をひねる作業ですし、間隔をあけると一度忘れかけて気持ち悪い。つまり、手間がかかって少し苦しい勉強ほどよく効く、という結果だったのです。ラクで気持ちのいい勉強ほど、じつは身についていない——この記事の出発点は、ここにあります。

なぜ再読は「わかった気」になるのか

では、なぜ再読はこれほど人気なのに効きにくいのでしょうか。理由は、再読が生む「手応え」のからくりにあります。一度読んだ文章をもう一度読むと、見覚えのある言葉が次々と目に入ってきます。すると脳は「知ってる、知ってる」とスムーズに処理でき、その軽やかさを「理解できている」と取り違えてしまうのです。これが流暢性の錯覚です。

けれども、「見れば分かる」ことと「何も見ずに自分で出せる」ことは、まったく別の力です。試験で問われるのは後者ですよね。テキストを開いて眺めているかぎり、答えはいつもそこにあります。その状態でいくら「わかる」と感じても、ページを閉じた瞬間に出てこなければ、本番では一点にもなりません。再読の心地よさは、この本番で必要な力とずれていることが多いのです。

やっかいなのは、この錯覚が「自分はどれくらい覚えているか」という自己評価まで狂わせてしまう点です。スラスラ読めると、つい「もう大丈夫」と判断して勉強を切り上げてしまう。本当はまだ穴だらけなのに、流暢さに安心して復習をやめてしまうわけです。手応えを信じて勉強量を決めると、いちばん危ないところを素通りしてしまう——再読の落とし穴は、ここにあります。

マーカーも、引いた瞬間に満足してしまう

マーカー(ハイライト)も、再読とよく似た落とし穴を抱えています。大事そうな一文に線を引くと、「重要なところを処理した」という達成感が生まれます。ところが、線を引く作業そのものは、じつは記憶をあまり鍛えてくれません。手を動かしている感覚はあっても、頭のほうはほとんど働いていない、ということが起こりがちなのです。

さらに困るのは、引きすぎると逆効果になりかねないことです。「ここも大事、あそこも大事」とどんどん色を足していくと、ページの大半が塗られ、結局どこが要点なのか分からなくなります。色とりどりに仕上がったページを見て満足度だけが上がり、肝心の記憶は薄いまま——そんな「映えるノート」が出来上がってしまうのです。線を引くこと自体が目的になり、内容を考える時間が減ってしまっては、本末転倒です。

もしマーカーを使うなら、引く量をぐっと絞るのがコツです。ページに少しだけ。そして「なぜここが大事なのか」を一度自分の言葉で説明してみる。線を引く前に頭を一度使うことで、ただの色塗り作業から、意味を考える作業へと変わります。とはいえ、それでも再読やマーカーは、次に紹介する勉強法にはかないません。

代わりに何をすればいいか——「思い出す」に置き換える

対策はとてもシンプルです。「読む」を「思い出す」に置き換えるだけ。テキストを一区切り読んだら、いったん閉じて、「いま読んだ要点は何だったか」を、何も見ずに自分で言ってみる。ノートも、ただ眺めるのではなく、隠して中身を思い出してみる。たったこれだけで、勉強の質はがらりと変わります。

なぜ思い出すと残るのか。理屈はこうです。頭をひねって自力で引っ張り出す、その「思い出しにくさ」を乗り越える一手間こそが、記憶の手がかりを強くしてくれます。すらすら読めてしまう再読では負荷がかからず、記憶はあまり鍛えられません。少し苦しいくらいが、ちょうどいいのです。この「思い出す練習」が効くことは、Roediger & Karpicke(2006)でもはっきり示されています。文章を読み返すグループと、読んだあとに思い出すテストを受けるグループを比べたところ、直後の手応えこそ読み返した側が上だったものの、1週間後には逆転し、思い出す練習をした側のほうがはっきり多くを覚えていました。先ほどの流暢性の錯覚が、ここでもはたらいていたわけです。

そして、思い出す練習のいちばん手軽で確実なかたちが「問題を解くこと」です。問題を解く行為は、それ自体が「何も見ずに答えを出す」訓練、つまり思い出す練習そのものだからです。ここで大事なのは、正解できたかどうかは二の次でよい、ということ。思い出そうとあがいた時点で、記憶はもう鍛えられています。むしろ間違えた直後に解説を読めば、「ここが穴だった」という空白に答えがはまり、その知識はかえって定着しやすくなります。間違いは失点ではなく、伸びしろのありかを教えてくれる合図なのです。

資格勉強での、つまずきやすい点

頭では「思い出すほうが効く」と分かっても、いざやってみると、つまずきやすいポイントがいくつかあります。先に知っておくと、挫折しにくくなります。

ひとつめは、「まだ完璧に読んでいないから、思い出す練習はまだ早い」と感じてしまうこと。これは流暢性の錯覚が言わせている可能性が高い、と疑ってください。完璧にインプットしてから——と待っていると、いつまでも気持ちのいい再読を続けるだけになりがちです。理解が6割でも、思い出す練習に入ってしまってかまいません。むしろ早めに解いて「分からないところ」を見つけたほうが、その後の読み込みが効率的になります。

ふたつめは、思い出す練習の「手応えのなさ」に心が折れること。再読はスラスラ進んで気持ちいいのに対し、思い出す練習はつまずくし、間違えるし、正直しんどい。この落差で「自分には向いていない」と感じてしまう人がいます。でも、その引っかかりこそ効いているサインです。ラクな勉強が身につかず、苦しい勉強が身につく——前半で見たとおりです。手応えの良し悪しで勉強法を選ばないこと、これが最大のコツかもしれません。

みっつめは、間違えた問題を「見直して終わり」にしてしまうこと。解説を読んで「なるほど」と思った瞬間、また流暢性の錯覚が顔を出します。読んで分かった気になっても、それは「見れば分かる」状態に戻っただけ。間違えた問題は、後日もう一度、何も見ずに解き直してこそ自分のものになります。

スキマ資格でどう実践するか

ここまでの話を、毎日の勉強に落とし込んでみましょう。やることは一つだけ。テキストを一区切り読んだら、すぐにスキマ資格の一問一答へ進むことです。「読んで安心する」勉強から、「思い出して確認する」勉強へ。順番をこう変えるだけで、同じ時間でも手応えと定着が大きく変わります。

一問一答は、まさに「思い出す練習」をそのまま形にした演習です。1問から解けて、登録なしでもすぐ始められ、解いた直後に解説で答え合わせができます。再読のように眺めるのではなく、毎回「何も見ずに答えを出す」ことを求められるので、流暢性の錯覚に足をすくわれにくいのが利点です。正解できなくても大丈夫。思い出そうとした時点で、もう効いています。

さらに、間違えた問題や苦手な問題は記録に残り、そこだけを選んで後日もう一度復習できます。前の節で触れた「間違えた問題を見直して終わりにしない」という落とし穴も、これなら自然に避けられます。一度間違えた問題が忘れた頃にまた出てくるので、「思い出す→忘れかけた頃にまた思い出す」という、記憶にもっとも効くリズムを、自分でスケジュールを組まずに回せます。

「再読して安心」を「解いて確認」に置き換える——その第一歩は、たった1問で踏み出せます。色とりどりのノートを眺める前に、まずは今日、1問だけ解いてみてください。利用はすべて無料です。

「思い出す」に切り替える(各資格の一問一答・無料)

よくある質問

Q.再読やマーカーは、まったくやってはいけないのですか?

A.いいえ、禁止というわけではありません。初めて読むときの理解づくりには役立ちます。問題は「読むだけ」「線を引くだけ」で勉強を終わらせてしまうこと。ひと通り読んだら、必ず「思い出す練習(問題を解く)」につなげる——この順番を守れば、再読もマーカーも下ごしらえとして活きてきます。

Q.スラスラ読めて「わかった」と感じるのに、なぜ問題だと解けないのですか?

A.それが「流暢性の錯覚」です。見覚えのある文章はスムーズに読めるため、脳が「理解できている」と取り違えてしまいます。でも試験で問われるのは「何も見ずに出せるか」。テキストを開いたまま感じる手応えと、本番で必要な力は別物だと考えてください。

Q.マーカーを使うなら、どう引けばいいですか?

A.量をぐっと絞るのがコツです。ページに少しだけにして、線を引く前に「なぜここが大事か」を一度自分の言葉で説明してみてください。引きすぎてページが塗りつぶされると、どこが要点か分からなくなり、満足度だけが上がってしまいます。

Q.テキストを完璧に読み込んでから問題に入るべきですか?

A.完璧を待つ必要はありません。理解が6割くらいでも、早めに問題を解き始めたほうが効率的です。解いて見つかった「分からないところ」が、その後に読むべき箇所を教えてくれます。完璧にしてから——と待つほど、気持ちのいい再読を続けるだけになりがちです。

参考文献

  • Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students' learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.
  • Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255.

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