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刑法難易度: 2021年度

司法書士 過去問刑法 第73問

問題

故意に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 5 までのうち,どれか。 ア Aは,Bを殺害する意図で,B及びその同居の家族が利用するポットであることを知りながら,これに毒物を投入したところ,B並びにその同居の家族であるC及びDがそのポットに入った湯を飲み,それぞれその毒物が原因で死亡した。この場合,Bの同居の家族がC及びDの 2 名であることをAが知らなかったとしても,Aには,B,C及びDに対する殺人罪の故意が認められる。 イ Aは,Bとの間で,Cに対して暴行を加えて傷害を負わせる旨を共謀したが,殺意を有してはいなかったところ,実行行為を担当するBが,呼び出したCの言動に激高して突発的にCに対する殺意を抱き,持っていた警棒でその頭部を殴り付けてCを殺害した。この場合,Aには,殺人罪の故意が認められ,同罪の共同正犯が成立するが,Aに科される刑は,傷害致死罪の法定刑の範囲内に限定される。 ウ Aは,覚醒剤を所持していたが,これについて,覚醒剤であるとは知らなかったものの,覚醒剤などの身体に有害で違法な薬物かもしれないが,それでも構わないと考えていた。この場合,Aには,覚醒剤所持罪の故意が認められる。 エ Aは,住居侵入罪の構成要件に該当する行為について,当該行為が同罪の構成要件に該当するかを弁護士に尋ねたところ,当該弁護士が法律の解釈を誤って当該行為は同罪の構成要件には該当しない旨の回答をしたことから,同罪は成立しないと誤解して実際に当該行為に及んだ。この場合,Aには,住居侵入罪の故意は認められない。 オ Aは,Bをクロロホルムにより失神させてから海中に転落させて溺死させようと考え,Bにクロロホルムを吸引させたところ,Bは,クロロホルム摂取に基づく呼吸停止により死亡した。この場合,Aには,殺人罪の故意は認められない。

選択肢

  1. 1アウ
  2. 2アオ
  3. 3イウ
  4. 4イエ
  5. 5エオ

正解

1. アウ

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解説

正解は「アウ」(正しいものの組合せ)。 ア=正しい。判例は法定的符合説(数故意犯説)を採り、行為者の認識した事実と現に発生した事実とが構成要件の範囲内で符合する限り故意を阻却しないとする。殺意をもって毒物を投入した結果、認識していなかった者を含めて複数人が死亡した場合であっても、そのいずれについても殺人罪の故意が認められる(最判昭和53年7月28日参照)。根拠:刑法38条1項、199条 イ=誤り。殺人罪と傷害致死罪とは殺意の有無という主観的要素が異なるのみでその余の構成要件要素は同一であるから、暴行・傷害の共謀をしたにとどまる者については、殺人罪の共同正犯ではなく、構成要件が重なり合う限度で傷害致死罪の共同正犯が成立する(最決昭和54年4月13日)。殺人罪の故意が認められるとする点が誤りである。根拠:刑法38条2項、60条、205条 ウ=正しい。覚醒剤であるとの確定的な認識がなくても、覚醒剤を含む身体に有害で違法な薬物かもしれないと認識しながらこれを認容していた場合には、覚醒剤所持罪の故意に欠けるところはない(最決平成2年2月9日)。未必の故意で足りるとする判断である。根拠:刑法38条1項、覚醒剤取締法41条の2 エ=誤り。法律を知らなかったとしても、そのことによって罪を犯す意思がなかったとすることはできない(刑法38条3項本文)。弁護士の誤った法的助言を信じて自己の行為が犯罪に当たらないと誤解した場合も、事実の認識には欠けるところがないから故意は阻却されない。情状により刑を減軽し得るにとどまる(同項ただし書)。根拠:刑法38条3項 オ=誤り。第1行為が第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであり、両行為の間に時間的場所的近接性が認められるなどの事情の下では、第1行為の時点で殺人罪の実行の着手が認められる。したがって第1行為によって被害者が死亡した場合であっても、殺人既遂罪が成立する(最決平成16年3月22日)。根拠:刑法199条、43条、38条1項 以上より、正しいのはアとウであり、正解は「アウ」となる。(出典: 令和3年度 司法書士試験 午前の部 第24問)

一問一答

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