問題
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。 D社は現在、新規設備の導入を検討中である。D社では、この投資案件の意思決定を正味現在価値法に基づいて判定することにしている。そこでD社は、正味現在価値法において割引率として用いられるべき資本コストの推計に取り掛かっている。 D社は、今回の投資案件において、投資に必要とされる資金の調達を全額長期借入によって行うことにしている。この借入金の金利は3%である。 また、D社は企業目標として平均的に有利子負債と株主資本との割合を1:1で維持することにしており、現在の株式資本コストについても検討することにした。D社では、経験的に自社の株式投資収益率とTOPIXの変化率との間に何らかの関係性があることを認識していた。そこでD社は、自社の株式投資収益率(RDt)とTOPIXの変化率(RTt)との間に次式のような関係があるものとして、過去の観察データに基づいて次式のαとβを実証的に推計することにした。 RDt=α+βRTt+et ただし、etの期待値はゼロ、分散は一定と仮定される。 (設問1)文中の下線部のように、この場合において投資判定基準として用いられるべき資本コストの説明として最も適切なものはどれか。
選択肢
- 1過去のROAの平均値を用いる。
- 2株式資本コストを用いる。
- 3企業全体の平均的な負債と株主資本との比率を用いた加重平均資本コストを用いる。
- 4長期借入金利を用いる。
正解
3. 企業全体の平均的な負債と株主資本との比率を用いた加重平均資本コストを用いる。
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解説
プロジェクトの資本コストに関する問題である。 【ポイント】 D社は今回の投資案件において、投資資金を全額長期借入によって調達するが、企業目標として有利子負債と株主資本の割合を1:1で維持することにしている。この場合、プロジェクトの資本コストは、個別プロジェクトの調達方法ではなく、企業全体の平均的な資本構成に基づく加重平均資本コスト(WACC)を用いるべきである。 【理由】 ①個別プロジェクトの調達方法に基づいて資本コストを決めると、調達方法が変わるたびに同じプロジェクトの評価が変わってしまう(無裁定の原則に反する)。 ②企業全体の資本構成は長期的に1:1で維持されるため、今回の借入によって一時的に負債比率が上昇しても、将来的には株主資本による補填等で調整される。 ③したがって、企業全体の目標資本構成に基づくWACCが、プロジェクトの真の機会費用を表す。 【各選択肢の判定】 ア(過去のROAの平均値):ROAは過去の実績指標であり、将来の資本コスト(割引率)として使うべきではない。誤り。 イ(株式資本コストを用いる):プロジェクトは全額借入で調達するため、株主資本コストのみでは不適切。誤り。 ウ(企業全体の平均的な負債と株主資本との比率を用いた加重平均資本コスト):上記の通り、目標資本構成に基づくWACCが適切。正しい。 エ(長期借入金利を用いる):個別プロジェクトの調達方法(借入)に依存した割引率は、企業全体の資本構成と矛盾し不適切。誤り。 したがってウが正解。(出典: 一般社団法人 中小企業診断協会 平成22年度 中小企業診断士1次試験 財務・会計 第17問 設問1)
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