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刑法難易度: 2022年度

司法書士 過去問刑法 第70問

問題

因果関係に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記 1 から 5 までのうち、どれか。 ア Aは、Bに対し、胸ぐらをつかんで仰向けに倒した上、首を絞めつける暴行を加えた。Bには重篤な心臓疾患により心臓発作を起こしやすいという身体的な事情があり、Bは、Aから暴行を受けたショックにより心臓発作を起こして死亡した。Aは、Bの心臓疾患について知らず、Bの心臓疾患という特殊事情がなければBは死亡しなかったと認められた。この場合、Aの暴行とBの死亡との間には因果関係が認められない。 イ Aは、 5 人の仲間と共謀して、Bに対し、マンションの居室で、約 3 時間にわたって、激しい暴行を加え続けた。Bは、伱を見て、同居室から逃走し、追跡してきたAらから逃れるために高速自動車国道に進入したが、進行してきた普通貨物自動車に衝突され外傷性ショックにより死亡した。Bは、Aらから暴行を受けたことにより、Aらに対して極度の恐怖心を抱いて逃走を図る過程で、Aらからの暴行や追跡から逃れるために、とっさに高速自動車国道に進入したものであり、その行動は著しく不自然、不相当ではなかったと認められた。この場合、Aらの暴行とBの死亡との間には因果関係が認められる。 ウ Aは、Bに対し、底の割れたビール瓶で後頸部を突き刺す暴行を加えて、後頸部刺創の重症を負わせた。Bは、病院で緊急手術を受け、いったんは容態が安定し、治療を受け続ければ完治する見込みであると診断された。Bは、その後、医師に無断で退院しようとして、治療用の管を抜くなどして暴れたことにより容態を悪化させ、前記後頸部刺創に基づく脳機能障害により死亡した。Aの暴行によりBが負った傷害は死亡の結果をもたらし得るものであった一方で、Bが医師の指示に従わず安静に努めなかったことで治療の効果が上がらずBが死亡したと認められた。この場合、Aの暴行とBの死亡との間には因果関係が認められない。 エ Aは、Bとけんかになり、金属バットでBの右足を殴打する暴行を加えて、Bに右大腿骨骨折の傷害を負わせた。Bは、自ら呼んだ救急車で病院に向けて搬送されたが、その途中、当該救急車が突如発生した竜巻によって空中に巻き上げられた上地面に落下したことによって、全身打撲により死亡した。AがBに負わせた傷害ではBは死亡しなかったと認められた一方で、BはAに傷害を負わせられなければ救急車で搬送されることも、竜巻が発生した場所に赴くこともなかったであろうと認められた。この場合、Aの暴行とBの死亡との間には因果関係が認められる。 オ Aは、深夜、普通乗用自動車(甲車)の後部トランクにBを閉じ込めて監禁し、その状態で市街地の片側 1 車線の道路上に甲車を停車させた。その数分後、普通貨物自動車(乙車)を運転してきたCが脇見運転をしたことにより甲車の存在に至近距離に至るまで気付かず、乙車を甲車の後部に追突させ、それにより、Bは、頸髄挫傷の傷害を負い、その傷害が原因で死亡した。Bの直接の死因は乙車による追突であり、Cの過失は甚だしいものと認められた。この場合、Aによる監禁行為とBの死亡との間には因果関係が認められる。

選択肢

  1. 1アエ
  2. 2アオ
  3. 3イウ
  4. 4イオ
  5. 5ウエ

正解

4. イオ

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解説

正解は「イオ」(正しいものの組合せ)。判例は、実行行為に内在する危険が結果へと現実化したといえるかによって因果関係を判断している。 ア=誤り。行為者の暴行が被害者の重篤な心臓疾患という特殊な事情と相まって死亡の結果を生じさせた場合、行為者がその事情を知らなかったとしても、暴行と死亡との間の因果関係は認められる(最判昭和46年6月17日等)。被害者の身体的素因は因果関係を否定する事情とはならない。根拠:刑法205条、判例 イ=正しい。被害者が長時間激しい暴行を受け、極度の恐怖心から逃走を図る過程で高速自動車国道に進入して死亡した事案において、最高裁は、その行動が著しく不自然、不相当であったとはいえないとして、暴行と死亡との間の因果関係を肯定した(最決平成15年7月16日)。逃走行為が暴行によって誘発されたものだからである。根拠:刑法205条、判例 ウ=誤り。被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったという事情が介在していても、行為者の暴行によって生じた傷害が死亡の結果をもたらし得る重篤なものであった以上、暴行と死亡との間の因果関係は認められる(最決平成16年2月17日)。被害者の落ち度は因果関係を否定する事情とはならない。根拠:刑法205条、判例 エ=誤り。行為者が負わせた傷害自体では死亡しなかったにもかかわらず、搬送中の救急車が竜巻に巻き上げられるという極めて異常な事情が介在して死亡した場合、行為に内在する危険が結果に現実化したとはいえず、因果関係は認められない。根拠:刑法205条、判例 オ=正しい。深夜に自動車の後部トランクに被害者を監禁して道路上に停車させていたところ、後続車が追突して被害者が死亡した事案において、最高裁は、追突した運転者の甚だしい過失が介在していても、監禁行為と死亡との間の因果関係を肯定した(最決平成18年3月27日)。道路上のトランク内に人を監禁する行為自体に、追突等による死傷の危険が内在しているからである。根拠:刑法221条、判例 以上より、正しいのはイとオであり、正解は「イオ」となる。(出典: 令和4年度 司法書士試験 午前の部 第24問)

一問一答

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