問題
あらかじめ予測不能な事態が生じた場合、それを危機として認識し、適切に対応しなければ企業の存続が左右されてしまうことがある。このような対応の管理を、予測可能な範囲内での変化への対応としてのリスクマネジメントと区別して、「クライシスマネジメント」ということがある。 クライシスマネジメントに関する下記の設問に答えよ。 (設問1)不測の事態はあらかじめ予測することが困難ではあるが、多くの場合それに先立って何らかの兆候が見られる。したがってクライシスマネジメントでは、まずこのような兆候を認識し、それが重大な危機を招く可能性があることを予測する組織能力が必要である。このような組織に関する記述として、最も適切なものはどれか。
選択肢
- 1オペレーションの現場近くにいる管理者や従業員を重視して、状況のわずかな変化を把握したり、それを事前に伝達した場合、十分に報いるような制度を整備しておく。
- 2これまでの成功経験や処方箋を基礎に、職務をできるだけ規則的なものに定型化し、これを遵守するよう義務づける。
- 3組織としての情報処理能力を高めるために、他者とは異なる個人的意見を控え、メンバーが共有している事柄を基礎に議論をするよう習慣づける。
- 4組織の中間管理職レベルの価値観を統一し、それを一貫性のある体系として維持することによって、そこから逸脱が生じた場合に問題に気づくことができるようにしておく。
- 5わずかなミスやヒヤリハット事例を収集し、それぞれの部門で原因や対処方法について議論する機会を定期的にもつようにする。
正解
1. オペレーションの現場近くにいる管理者や従業員を重視して、状況のわずかな変化を把握したり、それを事前に伝達した場合、十分に報いるような制度を整備しておく。
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解説
クライシスマネジメントにおいて、危機の兆候を察知する能力は「高信頼性組織(HRO: High Reliability Organization)」の研究で論じられる。HRO の特徴の一つに「現場知見への敬意(deference to expertise)」があり、現場で起きているわずかな異変を最も早く察知できるのは現場の管理者・従業員であるため、彼らから上位への迅速な報告経路と、それを促す制度的インセンティブを整えることが重要とされる。よってアが最も適切。イは「成功経験や処方箋」を職務に固定化する発想で、予測不能な事態への対応力を弱める典型的な硬直化のパターン。ウは異なる意見を控えさせる集団浅慮(グループシンク)を助長する危険な発想。エは中間管理職の価値観統一は危機察知より組織硬直化を招きやすい。オはヒヤリハット事例収集と部門内議論は危機察知の補助的方策として有効だが、(1)「定期的にもつ」だけでは不十分で、(2)部門内議論で完結すると組織横断的な早期警戒にならない懸念がある。アの方が現場発・即時報告の経路と制度的支援を明確化しており適切性が高い。(出典: 一般社団法人 中小企業診断協会 平成22年度 中小企業診断士1次試験 企業経営理論 第16問 設問1)
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