問題
A社はB社に対して商品の売買代金に係る買掛金債務を負っており、他方でB社はA社に対して貸付金債権を有している。両債権はいずれも弁済期が到来しているところ、両社は互いの債権債務の処理として相殺の可否を検討している。相殺に関する次の記述のうち、最も適切なものを①〜⑤の中から1つ選びなさい。
選択肢
- 1A社が悪意による不法行為に基づきB社に対して負担する損害賠償債務について、A社はこれを受働債権として、自己がB社に対して有する貸付金債権と相殺することができる。
- 2相殺は当事者双方の合意がなければその効力を生じないものであり、一方当事者の相手方に対する意思表示のみでは相殺をすることができない。
- 3B社のA社に対する貸付金債権が時効により消滅した後であっても、その消滅以前に既に両債権が相殺に適する状態(相殺適状)に達していたのであれば、B社はその債権を自働債権として相殺することができる。
- 4B社のA社に対する貸付金債権が第三者により差し押さえられた場合、A社は差押え後に新たに取得したB社に対する債権を自働債権として、差押債権者に対し相殺を対抗することができる。
- 5B社が相殺の意思表示をするにあたっては、その効力の発生に条件を付し、または一定の期限を付してこれをすることができる。
正解
3. B社のA社に対する貸付金債権が時効により消滅した後であっても、その消滅以前に既に両債権が相殺に適する状態(相殺適状)に達していたのであれば、B社はその債権を自働債権として相殺することができる。
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解説
正解は「相殺適状到達後に自働債権が時効消滅した場合でも相殺できる」とする選択肢である。自働債権が時効消滅していても、その消滅以前に既に相殺適状が生じていれば相殺することができる(民法508条)。これは当事者が相殺により決済済みと考える期待を保護する趣旨である。これに対し、悪意による不法行為に基づく損害賠償債務を負う者は、これを受働債権として相殺することができない(509条1号)ため、相殺できるとする選択肢は誤りである。相殺は相手方に対する一方的な意思表示によって効力を生じる単独行為であり、当事者双方の合意は不要であるから、合意を要するとする選択肢も誤りである。差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない(511条1項)。また、相殺の意思表示には条件または期限を付することができない(506条1項後段)ため、条件・期限を付し得るとする選択肢も誤りである。相殺適状・相殺禁止事由および相殺の意思表示の性質の正確な理解が問われる。
一問一答
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