問題
A社の従業員Bが、A社の事業のために自動車を運転して取引先へ向かう途中、その運転を誤って歩行者である第三者Cに衝突し、Cに損害を与えた。使用者責任および労働関係に関する次の記述のうち、最も適切なものを①〜⑤の中から1つ選びなさい。
選択肢
- 1従業員Bが事業の執行について第三者Cに損害を加えた場合、使用者A社は原則として被害者Cに対し使用者責任を負い、CはA社に対し損害の賠償を請求することができる。
- 2使用者A社が被害者Cに対して損害を賠償した場合、A社は加害者である従業員Bに対し、信義則上の制限を受けることなく、常にその全額を求償することができる。
- 3使用者責任が成立するためには、加害行為が職務そのものに該当する必要があり、職務と関連する行為であっても客観的・外形的に職務の範囲内とみえるにすぎない場合には、使用者責任は成立しない。
- 4使用者A社は被害者Cに対して使用者責任を負う一方で、現実に加害行為をした従業員B自身は、Cに対して不法行為責任を負うことはない。
- 5使用者A社は、Bの選任およびその事業の監督について相当の注意をしたことを証明したとしても、使用者責任を免れることはできない。
正解
1. 従業員Bが事業の執行について第三者Cに損害を加えた場合、使用者A社は原則として被害者Cに対し使用者責任を負い、CはA社に対し損害の賠償を請求することができる。
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解説
従業員が事業の執行について第三者に損害を加えた場合に使用者が使用者責任を負い、被害者が使用者に対し損害賠償を請求できるとする記述が最も適切である(民法715条1項本文)。使用者が賠償した場合に常に全額を求償できるとする記述は不適切で、被用者に対する求償は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度に制限されるとするのが判例であり、常に全額を求償できるわけではない。使用者責任の成立には加害行為が職務そのものに該当する必要があるとする記述も不適切で、「事業の執行について」は外形理論により、客観的・外形的にみて職務の範囲内に属するとみられる行為を含むと広く解される。加害従業員本人は被害者に責任を負わないとする記述も不適切で、現実に加害行為をした従業員本人も被害者に対し不法行為責任(709条)を負い、使用者責任とは不真正連帯の関係に立つ。使用者が選任・監督について相当の注意をしたことを証明しても免責されないとする記述も不適切で、民法715条1項ただし書は、使用者が被用者の選任およびその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは免責される旨を定めている(もっとも、実務上この免責が認められることはほとんどない点に留意を要する)。使用者責任の要件・求償の制限・行為者本人の責任・免責規定の理解が要点である。
一問一答
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