コラム一覧に戻る
科学的勉強法2026年6月2日9

問題を解きながら学ぶ「プレテスト効果」を最大限活かすには?

「読む→覚える→解く」より、答えを知らないまま先に解くほうが、その後の学習が記憶に残る。プレテスト効果を資格勉強に取り入れる方法。

資格の勉強は、「テキストを読む → 覚える → 問題を解く」という順番で進めるのが一般的です。私自身も、長くそれが正しいと思っていました。まず知識を頭に入れてから問題に当たるほうが、効率がよさそうに見えますし、何より「習っていないことを解いても意味がない」という感覚は、とても自然なものです。

ただ、記憶研究の知見をたどると、この順番は必ずしも効率的ではないようです。むしろ、テキストを読む“前”に——答えを知らないまま——問題を解いておくほうが、その後の学習が記憶に残りやすい。これは「プレテスト効果(pretesting effect)」と呼ばれています。一見すると遠回りに思えるこのやり方が、なぜかえって近道になるのか。直感に反するだけに、知っておく価値のある現象です。

この記事では、プレテスト効果とは何かという基本から、それを裏づける研究、なぜ「先に解く」と効くのかという仕組み、つまずきやすい点、そして資格勉強への具体的な落とし込み方までを順を追って解説します。読み終える頃には、「解けない問題を先に解く」ことが、決して時間のムダではないと分かるはずです。

プレテスト効果とは——「習う前に解く」という逆転の発想

まず言葉を整理しておきます。プレテスト効果とは、ある内容を学ぶ“前”に、その内容についての問題へ一度取り組んでおくと、その後に読むテキストや解説の理解・記憶が高まる、という現象です。ポイントは、解く時点ではまだ答えを知らない、という点にあります。

ふつう「テスト」と聞くと、学んだ成果を確かめるもの、つまり学習の“仕上げ”を思い浮かべます。プレテストはその真逆で、学習の“入り口”にテストを置きます。だからこそ、ほとんど正解できなくて当たり前。それでも、いや、解けないからこそ効く——ここが、この勉強法のいちばん不思議で、いちばん面白いところです。

「習っていない問題を解いても、間違えるだけで時間のムダでは」と感じるのは自然なことです。私も最初はそう思いました。けれども、その“間違い”や“分からなさ”そのものが、あとの学習を支える土台になります。なぜそんなことが起きるのか、まずは研究が何を示しているかから見ていきましょう。

研究が示していること

「習っていない問題を解いても、間違えるだけでは」という直感に反して、複数の実験がそれを覆す結果を報告しています。代表的なものを2つ紹介します。

ひとつめは、Richland, Kornell, & Kao(2009)の研究です。実験では、文章を読む前に、まだ学んでいない内容についての質問へ答えてもらいました。当然ながら事前テストの正答率は低いものの、最終的なテストでは、先に一度取り組んでおいた内容のほうが、ただ読むだけだった内容よりもよく定着していました。「解けないのに、解いたほうが残る」という、最初は信じにくい結果です。

ふたつめは、Kornell, Hays, & Bjork(2009)の論文です。これは表題がそのまま結論になっていて、「失敗した想起の試みが、その後の学習を高める」と述べています。つまり、思い出そうとして失敗すること自体が、後の学びを底上げするということ。失敗は避けるべきもの、という常識を裏返す指摘です。

ここで強調しておきたいのは、効果のカギは「正解できたかどうか」ではない、という点です。一度自分で答えを探そうとしてから解説を読むと、同じ内容でも吸収の度合いが変わります。点を取るためのテストではなく、頭を“受け入れ態勢”にするためのテスト——そう捉えると、プレテストの狙いが見えてきます。

なぜ「先に解く」と記憶に残るのか

では、なぜ答えを知らないまま解くだけで、その後の学習が変わるのでしょうか。理解の助けになるのが、検索練習(思い出す練習)との対比です。検索練習は学んだ“あと”に思い出す行為、プレテストは学ぶ“前”に答えを探しにいく行為で、タイミングは正反対です。それでも、働く仕組みは共通しています。いずれも「答えを探そうとする負荷」が、記憶の手がかりをつくるのです。

もう少しかみ砕くと、こういうことです。先に問題へ取り組むと、頭のなかに「これは何だったか」という空白、いわば“問いのかたち”が残ります。すらすら読み流すときには生まれない、引っかかりです。その空白があるからこそ、直後に読む解説が「ああ、これが答えだったのか」という答え合わせとして機能し、ただ眺めるよりも深く刻まれる、と考えられています。

別の見方をすれば、プレテストは「自分が何を知らないか」を先に教えてくれる仕組みでもあります。研究によれば、人は自分の理解度を実際より高く見積もりがちで、読んだ内容を「もう分かった」と勘違いしやすいことが知られています。先に解いて一度つまずいておくと、その思い込みが崩れ、「ここが分かっていなかった」と自覚できます。だからこそ、続くテキストを“自分ごと”として、注意深く読めるようになるのです。

つまずきやすい点:正解を狙う必要はない

プレテストを取り入れるとき、いちばん陥りやすいのが「正解しなければ」という気負いです。けれども、プレテストの目的は得点ではなく、その後に読む解説の吸収率を上げること。むしろ、最初に間違えることこそが、効果の源だと言ってもよいくらいです。意識したいのは、次の3点です。

  • わからなくても問題ない(むしろ自然なことです)
  • 当てずっぽうでも、一度は自分で答えを決める
  • 解いたら、間を置かずに解説を読む

とくに2つめが大切です。「分からないから飛ばそう」と素通りしてしまうと、頭に“問いのかたち”が残らず、効果が薄れます。たとえ根拠のない勘でも、一度「これだ」と決めてみる。その一手間が、続く解説を答え合わせに変えてくれます。

もうひとつ、見落とされがちなのが3つめです。せっかく解いても、答え合わせを翌日に回してしまうと、頭に残った空白が薄れ、効果は弱まります。「まず解く → すぐ学ぶ」を、できるだけ一組のセットにして繰り返す。これさえ守れば、正答率が低くても効果はしっかり得られます。間違いを恐れず、間違えたままにしないこと——この2つが両輪です。

資格勉強への具体的な落とし込み方

では、実際の資格勉強にどう取り入れればよいのでしょうか。難しいことは要りません。取り入れやすいのは、次の3つです。

1つ目は、テキストを一周する前に、過去問・予想問題から始めることです。知識がない段階で問題に一度ぶつかっておくと、「試験ではこういう聞かれ方をするのか」という枠組みが先にでき、その後に読むテキストの理解度が上がります。最初はほとんど解けなくて構いません。むしろ、解けないことが正しい入り口です。

2つ目は、見落とされがちですが、インプット(要点暗記)の段階でも「読む前に思い出そうとする」ことです。要点を上から眺めるだけにせず、「この用語の意味は何だったか」と一度自分に問い、頭のなかで答えを言ってから確認します。たったこれだけで、同じ要点ページが、ただの読み物から“小さなプレテスト”に変わります。

3つ目は、繰り返しになりますが、答え合わせを後回しにしないことです。解いた直後に解説を読むと、効果が最も高まります。「あとでまとめて確認しよう」とためずに、1問解いたらその場で解説、というリズムを習慣にしてみてください。

まとめノートを「読むだけ」で終わらせない

ここで、多くの人がつまずくポイントに触れておきます。まとめノートは、よくできているものほど“読んで満足”になりがちです。きれいに整理された要点を眺めると、それだけで分かった気になってしまう。けれども前述のとおり、要点こそ「読む前に思い出そうとする」価値のいちばん高い部分です。読むだけで通り過ぎてしまうのは、いちばんおいしいところを使わずにいるようなものです。

そこで活用したいのが、スキマ資格のまとめノートです。要点が穴埋め形式になっているため、読む前にまず自分で答えを埋め、その場で確認できます。つまり、インプットのページそのものがプレテストになるわけです。過去問で行う「まず解く → すぐ学ぶ」を、要点暗記の段階まで自然に広げられます。利用はすべて無料です。

進め方はシンプルです。

  1. 1各資格ページの「まとめノート」を開く
  2. 2わからなくても、まず自分で穴埋めに答える(プレテスト)
  3. 3その場で答えを確認し、解説を読む
  4. 4章を終えたら、過去問・予想問題へ進む

この4ステップを回すだけで、「読むだけ」だった学習が、「思い出してから学ぶ」学習に変わります。最初は空欄が埋まらず歯がゆいかもしれませんが、それは効いているサインです。スキマ資格は、検索練習・分散学習・間隔反復・プレテスト効果など、研究で効果が確認されている学習法を土台に設計しています。まとめノートも、その考え方を形にしたものです。まずは1章からお試しください。

各資格のまとめノート(すべて無料)

よくある質問

Q.プレテストでほとんど解けません。意味はありますか?

A.あります。むしろ解けないのが普通で、それで正常です。プレテストの目的は得点ではなく、続く解説の吸収率を上げること。一度「これは何だろう」と頭に空白をつくっておくほど、直後に読む解説が答え合わせとして深く刻まれます。正答率は気にしなくて大丈夫です。

Q.答え合わせはいつすればいいですか?

A.できるだけ解いた直後がおすすめです。時間が空くと、頭に残った「問いのかたち」が薄れ、効果が弱まります。「まず解く → すぐ学ぶ」を一組のセットにして繰り返すのが、いちばん効きます。

Q.検索練習(思い出す練習)と何が違うのですか?

A.タイミングが逆です。検索練習は学んだ“あと”に思い出す練習、プレテストは学ぶ“前”に答えを探しにいく行為です。ただし「答えを探そうとする負荷が記憶の手がかりをつくる」という仕組みは共通していて、両者は地続きの関係にあります。

Q.当てずっぽうで答えても効果はありますか?

A.あります。大事なのは、根拠がなくても一度「これだ」と自分で答えを決めることです。素通りせずに一度コミットしておくと、続く解説が答え合わせに変わり、記憶に残りやすくなります。

参考文献

  • Richland, L. E., Kornell, N., & Kao, L. S. (2009). The pretesting effect: Do unsuccessful retrieval attempts enhance learning? Journal of Experimental Psychology: Applied, 15(3), 243–257.
  • Kornell, N., Hays, M. J., & Bjork, R. A. (2009). Unsuccessful retrieval attempts enhance subsequent learning. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 35(4), 989–998.

あわせて読みたい学習法ガイド

関連コラム